ニコラシカ

36.楽しい仲間達？ ページ36

手に取ったおにぎりの袋を開封しながら溜まっていたLINEに目を通す。あたしの返信から、少々騒がしくなった気配があったがやはり"知り合いではない"と言う風に落ち着いていた。良かったと安堵の溜息を吐きつつも、一人の女の子が送ってきているメッセージの内容が微妙に引っかかる。

"LINE聞かれたらしい"

この文章、なにがどうこうって訳じゃないけど。まじで誰でも良いんだな、とは思った。確かに連絡先を聞かれたこの子は可愛らしい顔をしていると思うけど、あんなに生徒が集まっていたあの場でこんな事が出来るなんてあり得ない。

「ただいま〜」

咄嗟にスマホの画面から顔を上げ、気怠い声がした方を振り向く。相馬さんと、遅れて他のメンバーがぞろぞろと帰ってきた。見たことの無い人達も居て、一気に部屋が騒がしくなる。

「あれぇ、ホントに女の子居るじゃん」

鼻に付く口調が聞こえて男の人が突然視界に入ってきた。驚いて体を反らせば「ステップ近過ぎ」と渡邊さんが彼の肩を掴んであたしから遠ざけた。

「わ、ガチじゃん」

もはや誰が喋っているのかは分からないが、目がチカチカしそうなぐらい明るい髪の毛の人達が交互にあたしの顔を覗きにくる。

「しかも、わきをが好きそうな顔なんだけど」

「うん。嫌いじゃない」

わきをと呼ばれた彼は、まじまじとあたしを見てから「何歳？」と尋ねてくる。押しが強い"わきを"の勢いに眉をひそめたあたし。

「喋りかけんなや」

だが、彼はジン君に襟首を引かれてあたしから遠ざかっていく。別に年齢ぐらい良いでしょと唇を尖らせた彼だが、冷たい瞳を光らせたジン君に何とも言えない顔をして口を閉じた。

「あの汚いのがわきを、あっちの馬鹿そうなのがオナブタで、その隣にいる女っぽいのがステップ」

雑なジン君の自己紹介に至極不満そうなのがわきを。よろしくねと声を掛けてきたのがステップ。とにかくあたしに興味が無さそうなのがオナブタ。一気にうるさいのが増えたなと思いつつも小さく頭を下げた。するとニコニコ笑顔のステップがあたしの隣に腰掛ける。

「名前なんて言うの？」

「…Aです」

「ね、ここって男ばっかでしょ？だから女の子来たら楽しくなるかなって思ってたの」

「そう、ですか…」

「やばい奴ばっかりだけど仲良くしてね」

あたしの手を掴んでブンブンと振り回したステップに「お前が一番やばい」とその後ろでわきをが野次を飛ばした。顔を引攣(つ)らせる前途多難なあたしの気持ち、一体この部屋にいる誰に伝わるというのだろうか。

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