29.笑うと可愛い ページ29
柔らかいスウェット生地の、あたしには少し大きい服からは他人の香りがした。重い足でリビングの扉を開ければ部屋には渡邊さんとジン君が居て、それ以外の人達は姿が見えない。リビングに足を踏み入れたは良いものの、どこへ行けば良いのか分からずあたしはその場に突っ立ったまま彼等に向かって言う。
「お風呂、ありがとうございます」
目線だけをこちらにやった渡邊さんが、いいえと軽く頷いた。
「あと……タオルとか、服も」
「気にしないで」
控えめに微笑んだ渡邊さんをチラリと見たジン君が「あの下着選んだのマホトだよ」と、含み笑いをあたしに向ける。
「サイズ合ってた？」
ニヤニヤしながら尋ねてきた金髪の彼には、きっとデリカシーもクソもないのだろう。"そうですね、ちょっとカポカポしてました"とか冗談でも言える訳無いあたしは、返事を待っている彼をスルーした。
「マホトのセンスが見事に組み込まれてるチョイスだった」
何も言わないあたしにつまらなさそうな表情をして呟いた彼。やめろよと牽制した渡邊さんは「ほんと、マジで気にしないでね。無視して良いから」とあたしの顔を見ずに言った。気まずそうな彼の耳の先は少し赤い。確かに男の人が好きそうな可愛らしいデザインだったと思いつつも、あたしは笑って頭を振った。
「気にしないです」
途端に目を丸くしてあたしを凝視したのはジン君。数回瞬きをした彼は小さく眉をひそめた。
「笑ってるとこ初めて見た」
「…………」
「…いや、少し前に男と歩いてる時に笑ってるの見たわ」
「…………」
皮肉っぽい彼の台詞に「笑いますけど」と返せば「人間だもんね」とつっけんどんな返事が返ってくる。
なんだそれ！気分悪い！確かにある程度の予想はできたけど、安全面を考慮して無視すりゃ良かったと顔をしかめた。
「笑わない人なんていません」
「あぁそう」
「どれだけ怖い顔の人だって、」
「そうやって笑ってれば可愛いのに」
今度はあたしが目を丸くする番らしい。耳を疑う言葉だったが聞き返す余裕は持ち合わせてないし、もう眼球の形を元に戻せそうにもない。
なんだか嬉しいとかっていう感情よりも先に、無性に腹がたつ。飴と鞭を上手に使いこなしてあたしを飼いならすつもりなのか、何にしたって調子を狂わせられる。見えてこない彼の心にあたしの心はぐらぐらと揺れた。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです！ (2018年4月26日 21時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます！時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます！ (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2017年7月10日 7時
