ニコラシカ

24.君は可愛い女の子 ページ24

SIDE.JIN


本当は分かってる。自分でも頭おかしい事してると思う。正直顔は好みでも嫌いでもどちらでも無いし、性格キツめで、喧嘩したら口より真っ先に手が出そうなタイプだし。だからといって性的魅力を感じているわけでも無い。何の意味もない。言っちゃうと嫌い。深い意味なんて何一つとして無い。
ただ少し面白そうだなと思った、それだけだ。

「俺にしては思い切った」

深く吐いた息と共に煙草の煙が天井へ上がっていく。あの後結局彼女は「考えさせてください」とか言って、俺が渋る間も無く速攻家を出た。玄関先でそりゃあそうだろうね…みたいな感じで彼女を見送るトランジスタの目は、優しさにまみれた菩薩(ぼさつ)みたく明後日の方向を見てた。

「なんかよく分からんけど残念やったな。ジン君」

残りのサンドイッチを頬張りながら言ったへきほーに、俺は被せるように頭を振った。

「いや、絶対戻ってくるよ」

自信満々に呟いた俺に、なんでと尋ねてきたのはトランジスタ。不思議そうに首を傾げた彼に「２５万する皮のアウター、あいつに貸した」と言えば、途端に"ゲェ"みたいな顔をされた。
話は戻るが、この家を出ると言っても薄着の彼女を真冬の街中に放り出す訳にもいかないし、とりあえず最近の１番のお気に入りの服を彼女に貸したのだ。アウターはある意味人質で、そんな値段のするものを渡しておけば罪悪感で戻ってくるだろうという魂胆だ。彼女は帰ってくる、必ずこの家に住む。なんて、俺はそれだけ自信がある。

「馬鹿馬鹿しい」

聞こえてきたのは抑揚の無い声。それがマホトのものだと気付くのに時間はかからなかった。煙草を押し潰しながら「俺もそう思う」と返せば、ちらりとこちらを見たマホト。

「ジン、ちょっと前に言ってたろ。あの子ともう関わりたく無いって、その話はどこ行ったんだよ」

「ああ、確かに言ったような気がする」

気がするっていうか、言った。ハッキリ覚えてるし、本当にヤベー女だ！と思ったのも事実。

「でもあの時の俺とは違うし」

「あの時って……、一週間も経ってねぇけど」

失笑したマホトの言葉にトランジスタも深めに数回頷いている。閃いたみたいな顔をした俺は満面の笑みで彼等を指差した。

「じゃあ、動画にしたら面白くない？」

「シャレになんねぇよ」

「だよね」

分かってる。つまんねー冗談だよ。小さく呟けば、マホトの小さな溜息と共に副流煙が溢れ出る。高く登って薄くなる煙を眺めながら俺は少し考えて、またすぐに考えることをやめた。

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