03.来るもの拒まず ページ3
パタンと音を立てて閉まった扉の前で、あたしは暫く立ち尽くしていた。だって全くもって状況が理解出来ない。あたしがストレスを与えられて文句を言いに来たはずなのに、倍になって返ってきたのだ。これじゃあ踏んだり蹴ったり、”泣きっ面に蜂”とはまさにこの事。
「…おかしくない?」
漆黒の扉を前にあたしは呟く。俯いて部屋から立ち去ろうとしたが、やっぱりおかしい。そのままクルリと反転してまたインターホンに手を伸ばそうとすれば「まだいたの」とインターホンから声が聞こえてきた。妙に落ち着いたその声量にあたしはカメラを睨む。
「なんか納得いかないです」
「そーかな」
「そうです」
「それならごめんね」
「…………」
サラリと謝られた。向こうが謝った筈なのに何故か無性にムカつく。
「謝ったでしょ。早く帰りなさい」
ばいばいと付け足すその声と共に、シッシッと手を振る仕草が思い浮かぶ。インターホンから聞こえる声の感じからして、あの刺青の彼だと思う。
「待ってても出てこないよ」
「悪かったなとかちょっとでも思ってます?」
「スゴク、オモッテル」
「棒読み!絶対思ってないでしょ!」
思わず敬語を忘れたが相手もハナから敬語じゃないし、こっちが無駄に気を遣う意味も無い筈。トラブルの種を蒔いたのは向こうだし、どうしてあたしが下手に出なければいけないのだ。
「もう絶対騒がないって約束して」
「人間だからそれは無理」
「約束するまで帰りませんよ!」
「………」
インターホンに向かって叫ぶと、少しの間静かになる向こう側。不思議に思って眉をひそめながらカメラを覗き込めば途端に玄関の扉が開く。驚いたあたしは咄嗟にサンダルを履いた足を後ろへ引いた。
「ちょ、危ない!」
部屋から出て来た刺青の彼に「挟まるから」と眉間に皺を寄せれば、彼は淡々とした顔で言う。
「そんな所に突っ立ってるのが悪りーんだよ」
あたしを見下ろす彼の目には言葉が出ない。よくもまぁそんないけしゃあしゃあと言えるもんだ。…嗚呼、もしかするとあたしは真っ向から相手にする奴を間違っているのかもしれない。
「ジン君、もうやめなさいよ」
今日はもう帰ろうかなと思っていた矢先、ひょいと顔を出したのはまたもや派手な髪色の男。金の次は緑か。少し明るめの苔みたいな髪の毛の彼は、ジン君と呼ばれた彼を軽く押し退けてあたしの前に出てきた。
313人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時