17.スーパーヒーロー ページ17
SIDE.HEKIHO-
ちょっとした正義感が働いたんだろう、と俺は思っている。走り出したジン君には驚いたし、泣いた女の子を連れ帰ってきたことにも驚いた。
ジン君に保冷剤を渡された彼女はそれを頬に当てながらしくしくと泣いていたが、それでも徐々に落ち着きを取り戻したのか、暫くしてから「ありがとうございます」とジン君に頭を下げていた。様子を見ていた俺は彼等からパソコンへ目を落とす。
「顔の腫れ引いた?」
彼女にそう尋ねたのはまほっちゃん。大丈夫ですと答える二人のやりとりを、編集しながらなんとなく聞いていた。
彼女の名前は”A”というらしい。俺は割と自分の大好きな彼女以外の女の名前には関心が無いので、今改めて認識したという感じだ。だけどAの話は何となくみんなから聞いていた。ジン君を呼び出したり殴ったりと、それはまぁ乱暴な話題ばかりで。暴れん坊な人だなと思っていれば、今度は彼氏と喧嘩したらしい。詳しい詳細は知らないが、とりあえず騒がしい女の子は少し苦手だ。
「やっぱり荷物だけ取りに行きたいです」
突然思い立ったようにそう言って、保冷剤を頬から離したAが立ち上がる。騒々しい女はこれだから、みたいな感じで彼女を見た俺。さっきまでメソメソしてたのに、その切り替えの速さには脱帽だ。だけど有無を言わせずまほっちゃんがAを止める。
「いやいや待って」
「捨てるなって言いにいきます。あいつ、さっさと捨てちゃいそうだし」
「わざわざ行かなくても、LINEとか電話で言いなよ」
「絶対返信しないと思います」
これありがとうございましたと保冷剤を押し付けられたまほっちゃんは、立ち去ろうとしたAの手首を掴んだ。
「待て待て。それはわかるけど、だからって行くのは危ねぇよ」
「……………」
「どうせ喧嘩の後に何言ったって、向こうも冷静じゃ無いから」
「……そうですかね」
「そうだよ。落ち着けって」
今一度、彼にそうかなと確認した彼女。”うんうん”と頷いたまほっちゃんに少し迷いつつも、最後は「そうですよね」と自分に言い聞かせるようにその場に座り込んだ。神妙な面持ちの彼女にまほっちゃんは、ホッとした様子で保冷剤を冷蔵庫に片しに行く。落ち込んでいるのか怒っているのか、それともまだ悲しいのか、おにぎり座りをしたAは組んだ手の中に顔を埋めて動かなくなった。
「……あぁ、やだなぁ」
独り言のように小さく呟いた彼女。俺はそれを横目で見て、さっきから何も言わないジン君に視線を移す。静かにテレビを眺めている彼の横顔は、何処と無く微かな憂いを帯びていた。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時