43.後悔 ページ43
彼が近いうちに引っ越すと言っていたし、ついでに要らないものはもう捨ててしまおうと部屋の真ん中に分けつつ、ふと目に入ったのは彼と一緒に撮った写真が飾られて要る大きな写真立て。ガラス細工で出来たそれは光が反射すると宝石のようにキラキラと光って、あたしのお気に入りだった。そこに写るあたしは夢でも見てるみたいに幸せそうで、今の生活など頭の少しの場所にもなさそうだ。写真立てに手を伸ばし、そっと伏せるように倒したその時、背後に人の気配がした。咄嗟に後ろを振り向こうとした瞬間、懐かしい匂いが鼻腔を通り誰かにきつく抱きしめられる。誰かというか、一人しかいない。途端にぞわっと背筋が冷たくなり、あたしは顔を引攣らせた。
「な………」
「A、やり直そう」
耳元で聞こえた声に一瞬パニックになりかけたが、落ち着けと頭に言い聞かせ深い呼吸を繰り返した。こうなる可能性がゼロだと思って、のこのこと部屋に来る程あたしは馬鹿じゃない。とにかく落ち着けと呪文のように繰り返す。
「…悪いけど、そんなつもりでここに来たわけじゃないから」
「ごめん。俺が間違ってた」
「いや、ほんとに、離して」
「考えたんだけど、今直ぐにでも結婚しようよ。俺絶対変わる。必ず大事にするし責任取るから」
結婚なんて軽々しく口に出すワードじゃないし、口では何とでも言える事をあたしはよく知ってる。彼の息遣いや強い力、輝く写真立て、何も変わっていない部屋、彼の体臭、全てが気持ち悪くて仕方ない。
「ねぇ…こんな状態じゃ話せないし、とりあえず離れてよ」
一点を見つめながらそう言えば、彼はあたしの言う通り抱き締めていた手を緩める。彼の顔を見て感情を乱されてしまうのが怖くて、斜め下に目をやりあたしは次の言葉を冷静に考える。とにかく穏便に済ませ、必要なものだけ持ち帰る。それだけがしたい事で、それ以外の事など何もしたくはない。
「あのさぁ…さっきも言ったけど。あたし、もう」
言葉の途中で、有無を言わせず突然ベッドに押し倒された。その勢いで後頭部を壁に強く打ち付け、あたしは鈍い痛みに悲鳴をあげる。頭を手で押さえたその瞬間、彼の顔があたしの視界に入った。
「なんで勝手に出て行った？」
「………………」
ひゅんと心臓が止まり"冷静"の二文字は消え去って、全身を包み込むような恐怖感がここに来た事を速攻で後悔させた。血走った瞳でこちらを見下ろし、あたしの上に跨った彼の目はもはや普通ではなかった。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです！ (2018年4月26日 21時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます！時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます！ (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2017年7月10日 7時
