27.運命か必然か ページ27
彼等の家を出てから数日が経った。夕暮れの竹下通りは、突然降り出した雨のお陰か人の通りも少なくなってきている。飛び出てきた実家へすごすごと帰るわけにも行かず、あたしは未だに友達の家を行き来してた。でも、もうそろそろこの生活にも終止符を打たなければいけない頃がくる。ずっと居てもいいよとは言われても、友達の家に一生お世話になる訳にもいかない。向こうにもペースがあるはずだし、だからといって漫喫とかネカフェとかは無理。こうなるとやっぱり男かと頭を悩ませていたその時。
「ねぇ、おねーさん」
後ろから肩を叩かれ声を掛けられた。タイミングの悪さに苛立ちを隠さないまま振り返ったあたしは、その瞬間振り返ったことを後悔することになる。目の前にいたのは見覚えのある派手な頭と奇抜な服装。
「A!!」
名前を呼ばれたのを認識する前にあたしは走り出した。別に悪いことをした訳じゃないけど今見たい顔でも無い、イコール会いたく無い人という訳だ。
「おい!待てよ!」
後ろから聞こえたでかい声にギョッとする。何故か彼があたしの後を追ってくるのだ。追われると逃げたくなるのは誰だって同じで、あたしは全速力で大雨が降る街中を駆け抜けた。
「は?なんで追いかけてくんの!」
「逃げるからだろ!止まれよ!」
「追いかけてくるから逃げてんの!」
人の間を抜けて、大通りに出ればまさかの交差点。行き交う大量の車を目の前にあたしは急ブレーキをかける。こればかりはどうしようもない。逃げ切れても車に轢かれてりゃ話にならない。
「おらァ!」
一際大きな声が聞こえたと思えば途端に襟首を掴まれ、一気に首が絞まった。苦しさに"ぐえっ"と間抜けな声を出したあたし。引っ張られたせいで後ろ向きに転びそうになった体を、彼は軽々と支えた。
「久しぶり」
濡れた前髪から大粒の雫が滴る。笑顔の彼にあたしは苦笑いを返した。同じく信号待ちをしたいた周囲の人達が奇妙な目でこちらを見ては素早くサッと逸らしていく様子が悲惨だ。
「落ち着けよ。100メートル走じゃないんだから」
「…………言われなくても」
あたしは至って冷静だ、と言おうとしてやめた。彼の目を見て、冷静で無くなりそうだと思ったからだ。
「今までどこで何してたの」
「…関係なく無いですか」
「言うと思った。で、今からどこ行くの?」
「それも関係無いですよね…」
「そのアウターあったかいでしょ」
「………………うん」
彼の笑顔はいつ見てもいろんな意味で恐ろしい。空から落ちる無数の雨粒があたしの頰を濡らす。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時