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件のセクハラ野郎を脅し、金輪際Aに近付かない様にした。
百円ショップで売ってるプラスチック製の手頃な水筒を握り潰せば、相手は顔を真っ青にして俺の話を聞いてくれた。
やっぱり、力は持ってた方がいいな。
Aも、時間が経てば男を無理に避けたりしなくなるだろ。
「海行かね？」
「行かねぇ」
セクハラ事件からひと月経ったある日の昼休み。
去年同じクラスだった奴に廊下で呼び止められたかと思ったら、遊びに誘われた。
当たり前だがすぐに断った。
「なんでだよ？！＊＊ちゃんもさ、海、行きたくない〜？」
俺の隣にいるAは、急に声をかけられて驚いたのだろう。俺の腕を掴んだ。
「えっ、えっと……」
「海で泳いだり、ビーチバレーしたり。な？楽しそうだろ」
「う、うん。楽しそう」
俺が来ないならと、Aを誘うんじゃねぇ。
Aはあっさり食いつくし。
「行きたいのか？」
Aに聞くと、Aは首を横に振った。
「＊＊＊が行かないならいいや」
「そういう訳だ。諦めろ」
しかし、元クラスメイトは諦めが悪くて有名な男だった。
Aに「＊＊ちゃんが行くって言ったら、＊＊＊は絶対行くよ」とか言いやがる。
やめろ。
Aに教えるんじゃねぇ。
自分のせいで俺の時間が減ってると思わせてしまうだろうが。
Aは俺をチラリと見た後、足元へ視線を落とした。
「知ってる」
知ってんのかよ！！？
気付いてないのかと思ってた。
「＊＊＊の過保護っぷりは、＊＊ちゃん本人にも気付かれてたみたいだねぇ。まぁ、＊＊＊もだけど、＊＊ちゃんも相当だよね」
過保護……
過保護、というのだろうか？
俺のは、ただの独占欲だ。
Aを誰にも取られずに、一緒に居たいだけだ。
「でも……＊＊ちゃんって、本当は海に行きたいんでしょ？」
元クラスメイトがAに一歩近づいた。
Aは俺の後ろに隠れる。
「……もしかして……俺、嫌われてる？」
「どうだろうな」
ショックを受けた様な顔をする元クラスメイトには、曖昧に返しておく。
Aにデリケートな事は聞けないからな……
母親にでも相談してくれれば、まだどうにかなるかもしれないが……
「う〜ん……でも俺、＊＊＊と一緒に海に行きたいんだよなぁ」
「何でだよ」
「え……？理由なんているか？一緒に海ではしゃぎたいんだよ」
まっすぐ俺を見るコイツは、嘘を言っている様には見えない。
俺はむず痒くなって、顔をそらした。
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作者名：そうや | 作成日時：2020年9月27日 15時
