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気がつくと、俺はAを抱えて森に立っていた。
いつの間にか、傷は消えていた。
腕も元どおりになっている。
どこも痛くない。
夜明けが近いのか、空が白んでいる。
「A……」
名前を呼ぶ。
返事は無い。
此処は何処だ？
辺りを見渡すが、知らない場所だ。
「……」
静かだ。
落ち着く。
体が軽い。
日が昇る前に、影に移動しよう。
「……＊＊＊くん」
声が聞こえた。
誰かの声が。
後ろを振り返る前に、何かが近づいて来たので、それを避ける。
一息で木の上に飛べば、俺の事を呼んだであろう、ソイツの姿が見えた。
黄色いタコが、立っていた。
鬼ではなさそうだ。
人でもないが。
「誰だお前……」
「今日、君の家に行きました」
俺の質問に答えず、訳のわからない事を言い始める人外。
家？
育手の爺の所か？
「ご両親を殺したんですね」
親？
俺に親なんて居ない。
「何を言ってるんだ……？」
眉を顰める俺を見上げるタコ。
「君は……かいがくくんですね」
「だからなんだ？」
「かいがくくん、私とお話しましょう」
「俺はお前と話す気は無い」
「そんな事言わないでくださいよ〜！」
触手を伸ばして俺に触ろうとしたので、血鬼術でその触手に罅を入れさせた。
人外は、驚いたように自分の触手を見た。
「……わかりました。では、このままお話ししましょう」
「しねぇよ。俺は行く」
「何処にです？」
「知らん」
Aを抱えなおして、移動する。
が、目の前に人外が姿を現した。
「速いですね〜。しかし、私の方が速い」
抱えていたAが、人外に取られた。
「おい、Aを返せ！！」
人外が、俺から離れて行く。
やめろ。
返せ。
もう、日が……
いつも携えている刀がなかったので、手頃な木の枝を拾って、構えた。
シイィィィッと、口から呼吸の音が聞こえる。
雷の呼吸
伍ノ型
熱界雷
技を放てば、人外がその技を避けた。
森を抜けたが、まぁいい。
動揺している隙に、距離を詰める。
「し、しまった……！」
慌てふためく人外。
Aに手を伸ばす。
日が完全に昇ってしまった。
Aも、俺の体も燃えている。
「いけない！」
人外が俺の腕を掴んだ。
そのまま地面に落ちる＿＿＿前に、人外の触手を切り落として、受け身をとる。
体の殆どが焼けてしまった。
もう、立つのでさえ辛い。
「A」
俺の腕の中にいるAを抱きしめる。
抱きしめたAは、血まみれだった。
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作者名：そうや | 作成日時：2020年9月27日 15時
