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一ヶ月学校に行かない日が続いていた。
放課後に、浅野が俺の様子を見に来た。
母親が家に上がらせたのだろう。
リビングに、そいつは居た。
「君が学校に来れない理由は、ソレなのか？」
ソレ、とは、この見た目の事だろう。
どちらかと言えば、見た目より体質の方に問題があるので、首を横に振る。
浅野は眉を寄せた。
「じゃあ何だ？＊＊さんが心配か？」
そうだな。
一番はそれだ。
でも、Aの目が覚めたからと言って、学校にいけるとは限らない。
何も言わない俺にしびれを切らしたのか、浅野は立ち上がった。
そして、俺の肩を掴んだ。
「何か言ったらどうだ？何故喋らない？」
俺は浅野の手を払いのけた。
アイツに背を向け、部屋に戻る。
後ろから、浅野が近付いてくる気配がする。
「おい」
「……触るんじゃねぇ。もう俺達に近づくな」
掴まれた腕を振りほどき、Aの部屋に入って後ろ手にドアを閉めた。
グルルルと、喉から勝手に音が出る。
発狂しそうだ。
腹が減った。
落ち着け、落ち着け。
同じ失敗を、何度もするわけねぇだろ。
フーッフーッと、自分の息遣いだけが聞こえる。
ドアを背もたれにして、その場に座り込む。
大丈夫だ。
人を食ってない。
我慢できている。
「……このままでも、会話はできるか？」
ドアの向こう側から、浅野の声が聞こえた。
「帰れ」
「君達はもう、登校できないのだろう。今のままだと。来年はきっと、E組行きになるだろうな」
どうでもいい。
成績とか、今までの努力とか、やっぱり、誰も見てなかったんだから。
「惨めだな」
「帰れ」
あの時と、同じ事を言われた。
今度は、クラスメイトに。
「次会うときは、きっと同じ校舎には居ないだろう」
「帰れ」
「……あぁ、そうするよ」
浅野の気配が遠ざかった。
俺は立ち上がり、眠っているAに近付く。
Aは昨日と何も変わっていなかった。
「A」
名前を呼んで、髪を撫でる。
髪を洗えていないから、以前の様な綺麗さは残っていなかった。
早く、起きろ。
Aの頬を撫で、指で顎を持ち上げる。
形の良いAの唇を噛み千切ろうとして、やめた。
「……」
鬼を食うより、人間の方が美味いに決まってるだろ。
何をしてるんだろうな、俺は……
唯一俺を受け入れてくれる存在を消すなんて、どうかしている。
パソコンを立ち上げ、人名をひたすら検索していく。
結果はいつもと同じで、これといった収穫はなかった。
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作者名：そうや | 作成日時：2020年9月27日 15時
