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Aが戻って来てから、俺はAの部屋で過ごす様になった。
定期的に眠っているAの体の向きを変えてやりながら、鬼について調べる。
一日一回、母親がAの体を拭きに来る。
その時、俺は部屋の外で待っている。
もしAが起きた瞬間、母親を食ったら、その時はその時だ。
そうなったら、俺は止めるかもわからない。
一緒に食べてしまいそうだ。
「**、楽しい夢を見ているの?」
母親の一方的な会話が聞こえる。
「早く起きないと、**の好きなお菓子がなくなっちゃうわよ?」
Aからの返事は、勿論無い。
「……部屋も、ずっと真っ暗ね。換気もしてないし……」
嫌な予感がした。
俺は部屋のドアを開ける。
母親が、カーテンを開けて、雨戸も開けていた。
日光が、部屋に差し込んでいる。
「まっ……待て___」
眩しい光が、部屋に入る。
母親を止めるよりも先に、Aに布団を被せた。
部屋が明るくなり、俺の肌も焼ける。
母親は俺を見て困惑していた。
「な、何してるの?」
「それはこっちの台詞だ!何、やってんだよ。Aを殺す気か?!」
強い口調で攻め立ててしまった。
母親の両目から、ポロポロと涙が零れる。
「違う……違うわ。**に、日の光を浴びせようとして……」
母親が泣き崩れる。
肌が焼き続けている状態の俺は、雨戸を閉めた。
血と肉の焼けた匂いが、部屋の中に漂う。
「Aも、俺と同じ様に、日光を浴びたら焼けるんだよ」
「誰よ、Aって……**よ。私が腹の痛さに耐えて産んだ、私の子よ。***も、私の子なの」
母親はゆっくり立ち上がると、俺を見た。
「どうして、こうなってしまったの?私はただ、貴方達と、普通に暮らしたいだけなのに……」
俺に聞くなよ。
調べても、何も出てこないんだよ。
俺の頬を撫でようとする母親の手を、叩き落とす。
日光で焼き爛れた手がまだ再生してないが、そんなのはどうでもよかった。
「触るんじゃねぇ」
近付くな。
腹が減って、しかたねぇんだよ。
我慢できなくなるだろ。
母親は下唇を噛み締めると、Aの着替えやタオルを持って、部屋を出た。
俺は深呼吸をし、Aの寝ているベッドに近付く。
俺以外の血の匂いはしない。
Aは焼けてないだろう……
被せた布団をめくり上げると、規則正しい寝息を繰り返しているAがいた。
傷一つ無い。
あぁ、よかった……
Aの頬を撫でる。
少し冷たいが、ちゃんと温もりがあった。
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作者名:そうや | 作成日時:2020年9月27日 15時