約束したから (ページ18)

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退院しても、俺は毎日の様にAの病室に足を運んだ。

フードを被って、マスクをして、メガネをかけて外に出る。
日傘をさせば影ができるので、足元さえ注意すれば、移動時間はかかれど、昼間でも活動できる。

図書館で、鬼について調べた帰りに、Aの様子を見にくる。
家に帰ってからは、学校の宿題をして、インターネットで鬼について調べる。

寝れないので、一日は長い。
時間は腐る程あるのだ。

普通ではない者に、この世界は優しく無い。
街を歩くだけでも、俺は目立つのだ。

不審者だと思われ、図書館を出禁にされた。
意味がわからない。

まぁ、図書館で調べても特に何もなかったからな……

夜はいい。
陽の光も、人の目も気にしなくていい。
職質さえ気をつければ、何も起きない。

家のパソコンを使いインターネットで、片っぱしから調べていく。
鬼殺隊や鬼の始祖の名前、呼吸……

どれも、検索でヒットしなかった。

おい……どういうことだ？
鬼殺隊は政府非公認だと言えども、何かしら資料が残っててもおかしくないだろ。
藤の花の家紋の家も、何も無い。
鬼については、どれも俺の知っている鬼ではないものばかりだった。

人肉食をする人についても調べたが、鬼ではなかった。

二学期が始まっても、俺は学校には行かなかった。
そもそも、今の俺の姿じゃあ、コンビニにも行けない。

元クラスメイトに「カラコン入れれば？ハロウィーン用の。瞳の周りも覆う様な大きいやつがあるよ」という内容のメールと共に商品紹介サイトのURLが送られて来たが、あんな高いもん毎日つけて学校に行ける訳が無い。
それに、頰の痣だって隠さなきゃ行けないのだ。
何より、日光を浴びれないのが一番の問題点だ。

一度、父親に引きずられて家の外に出されたが、俺は文字通り焼けた。
肌が焦げた。
慌てた父親に水をかけられたが、原因は火ではなく日なので、意味がない。
影に移動すれば焼けることも無いのだと説明すると、母親は悲しんで泣いてしまった。
自分が生んだ子供が、普通じゃなくなったのだ。無理もない。

父親は、仕事にのめり込む様になった。
この状態を忘れたかったんだと思う。
帰りも遅い。

そんなある日、父親がAを連れ帰って来た。
医者に、退院しても良いと言われたらしい。
しかし、Aは目を覚ましていなかった。

父親はAの部屋にAを寝かせる。

「……医者に見捨てられた」

それ以上何も言わずに、父親はAの部屋から出て行った。