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入院中に、元クラスメイトがお見舞いに来た。
「***、お見舞いに来たぞ〜」
紙袋を持った元クラスメイトが、病室に入る。
「**ちゃんの容体、どう?」
知るか。
こっちが知りたい。
Aは目を覚まさない。
ずっと眠っている。
俺は明日で退院なのに、Aはそれができない。
「ほい、これ。お見舞い。退院したら食べろよ〜」
と、紙袋を差し出してくる。
俺はそれを受け取った。
Aが以前、行きたがってた店の焼き菓子だった。
病院食も食えなかったのに、菓子なんて食える訳が無いだろ。
「そういえば、お前これからどうすんの?」
学校、来れるか?と、首を傾げる元クラスメイト。
俺はベッドで寝ているAに視線を移す。
元クラスメイトは俺の隣に椅子を持って来て、そこに座った。
「担任にさぁ、***が学校に来る様に言ってくれってさ〜。でも俺、そういうの苦手でさ〜」
行かない。
Aが行けねぇのに、行ける訳が無い。
「ま、行きたくないなら無理して行かなくていいよ。気が向いたら来ればいいと、俺は思う」
元クラスメイトも、Aに視線を向ける。
「**ちゃん、寝てるねぇ。早く目が覚めればいいね〜。また、遊びに行こうぜ。次は何処が良い?」
次……
考えてはみたが、特に何も思い浮かばない。
早く、Aの目が覚めればいい。
鬼に時間なんて関係無い。
何処にでも、何度でも遊びに行ける。
夜に限られているが。
「考えとけよ?いつでも連絡してくれていいから。あ、夜中はやめろよ?俺、いつも21時には寝るから」
元クラスメイトは立ち上がると、椅子を元の位置に戻した。
「じゃ、また来るから」
手を振るそいつに軽く手を振り返す。
元クラスメイトは歯を見せて笑うと、病室から出て行った。
どっと、涎が出てくる。
食欲を抑え込むのも、疲れる。
AやAの言ってた鬼の様に、眠れなかった。
そもそも、寝ているからと言って、食欲は無くなるのか?
病院食は食べたそばから吐くし、今まで食えてた食べ物が一切食えなくなっていた。
前世で鬼になった時は、人を普通に食ってたが……
今世では、そうもいかない。
そこもかしこも監視カメラだらけだし、人が一人居なくなると、捜索願が警察に出されるし……
せめて、Aが目を覚ますまで、飢えは我慢してやろう。
「早く、起きろよ……」
Aの頭を撫でる。
返事はおろか、反応も無い。
起きろよ。
何時間寝ているつもりだ?
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作者名:そうや | 作成日時:2020年9月27日 15時