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ー115ー ページ25

目の前には大きなお屋敷がある。
それよりも、私を背負ってる隠の人が汗だくで息切れしている方が気になるが。


「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫ですから!し、喋らないで下さい!!」


目元を真っ赤にした隠の人は、まだ息も整ってないのに早足でお屋敷の中へと入った。

何故敬語??


「ゼェ、ハァ」


大丈夫かな?この隠の人……?


「す、済み……ません!ごっ……ごめんくださぁい!」


この人はもう泣きそうだ。
理由は知らないが。


「あらあら、そんなに大声を出さなくても聞こえてますよ〜?」


髪の長い女の人が、お屋敷の奥から姿を現した。
蝶の髪飾りが特徴的だ。

隠の人はその場に膝をついて、私の膝裏に当てていた手を離した。

あ、降りろと?


「ありがとうございます」

「仕事なので……」


隠の人はそう言うと、お屋敷から出て行った。

大丈夫かな?
フラフラしてたけど。


「どこか怪我をしたのかしら?それとも体に不調でも?」


女の人が訪ねる。
その人に顔を向ける。
女の人は眉を下げ、小首を傾げていた。

佐々木さんと違って、あざとさが全く無い。


「あ、えっと。怪我です。背中に」

「あらまぁ大変。それじゃあ早速診察しましょうね」


女の人について行く。
診察室に入ると、女の人は椅子に座った。


「さ、貴方もその椅子に座って」

「あ、はい」


指示通り、椅子に座る。

お屋敷の中に、病院があるのか……


「それじゃあ、まず貴方のお名前を教えて」

「Aです」

「下のお名前?」

「はい」

「苗字は?」

「無いです」


一時期、有ったが。
あれは兄達の苗字だ。もう私の苗字ではない。

キッパリ言い切る私を見て、女の人は悲しそうな顔をした。


「そう。ごめんなさいね。配慮が足りてなかったわ」

「いいえ、気にしてないので」

「気にするわ。あ、年齢は幾つかしら?生年月日も教えてくれると嬉しいわ」


ここに来て、私は自分の誕生日を知らない事に気付いた。
そもそも、今が何時代なのかも知らない。

ヤッベェ、どうしよう……


「ど、どうしたの?怪我、痛むのかしら?」


ワタワタする女の人。
私は首を横に振った。


「あ、いえ……生年月日、解らなくて」

「まぁ……」


女の人は口を両手で覆い隠した。


「ご、ごめんなさい。大丈夫よ。名前だけ解れば、問診表は書けるもの」

「済みません」

「Aは何も悪くないわよ」


いきなり呼び捨て?!
あ、でも、勾玉野郎の「麻呂眉」呼びよりマシか。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 転生トリップ , 獪岳   
作品ジャンル:ラブコメ
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作者名:そうや | 作成日時:2020年8月14日 10時

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