特約 ページ45
【夢主目線】
[特約:マフィア構成員Aを取引期間中、組合の使徒及び其の可能性が疑われる人物への面会を厳禁する。其れに辺り、徹底的外出管理を命ずる。]
首領は断固として私を組合の使徒に会わせたく無い様だった。其れが此の特約を生んだのだ。
(私をどうしても父親には渡さないつもりか……)
ここまで執着深く制限されると人間という生き物は多少の鬱陶しさを感じ、例え其れが自分より立場が上でも“反骨心”というものが湧いてくるものだ。
私は手紙をそっと封筒に入れると、元あった机の下に戻した。
探偵社は確実に組合を追い詰めていた。
先程、乱歩さんと与謝野さんは組合の使徒と交渉に行ったらしい。
(才穎と治癒…最早組合には勝ち目なしか…。)
そう言えば太宰さんは“赤毛の重力使い“がどうとか言っていた。
もしかすると旧双黒の復活か……?
(……組合さん負け確ですな…。)
私は畳に寝っ転がる。
久しぶりに人間らしい部屋に居る気がした。
寝返りを打って畳に鼻を近付ければ彼の残り香がする。
あの日を思い出した。
後ろから包まれたあの日を。
夢現つとして、陽も傾いて西の空がオレンジ色に染まり始めた夕方……。
ミシリと畳が音を立てたので驚いて飛び起きた。
「誰が居る」
直感でそう思った。
心拍があからさまに早く打たれる。
そうして音を立てる主が居るであろう背後をゆっくりと振り向いた。
────!!!
そこには戸棚を漁る人影が!
「────キャアッ……」
叫び声を上げる前に其の人影に気付かれ、口を塞がれた。
一瞬の出来事で驚きながら、震えて痙攣する瞼を開けた。
(…………太宰さん…?)
夕陽が次第に弱くなる部屋で私の口元から彼は静かに手を引いた。
其の間、彼の瞳は揺れていた。
以前にも感じた哀しげな其れは一層色濃く、彼の瞳に宿り、何とも言えない陰鬱さを醸し出していた。
太宰「驚かせちゃって悪かったね。私とした事が忘れ物をしてしまって…だから私が此処に来た事は誰にも言わないでくれ給え。いいね?」
私は一度頷くだけで何も言わなかった。
太宰さんは暫く戸棚を漁ると残りの少ない包帯を持って私の前に座った。
太宰「悪いけど……此の包帯をこう…右眼を覆う様に巻いてくれないかな。四年ぶりに巻くから一人で出来る自信が無くてね。」
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葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります! (2018年8月1日 13時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです!通知来る度うきうきしてます!無理せずこれからも更新頑張って下さい! (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです!応援してます!壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います!最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎそーまっち | 作成日時:2018年6月9日 18時