決別と隔離 ページ22
【夢主目線】
地下牢は陰湿で光の一つも入らない。
正に絵に見る監獄そのものであった。
中也「───入れ。」
錆び付いた鉄格子が開き其の不快な音に思わず顔を歪ませた。
────ガチャ。
南京錠を閉める音が寂しくこの空間に響いた。
私は鉄格子を背に声を押し殺しながら泣いた。
どんなに足掻いてもこの結果は免れなかった。
結果この場所が私の本来の居場所だったのだ。
[監獄に収監される大罪人の娘]
この言葉の響きになんら変わった事は無かった。
否、これでは自分は無罪潔白の様ではないか。
今の自分は反勢力組織の上層部に属する重役の身である。
自分の事を“何の罪も無い”と豪語していた時とはまるで違った。
気づいた時には既に父親に負けず劣らぬ大罪人宛らであった。
そんな私を哀れんだのか分からないが、冷たかった背中にそっと外套が掛けられた。
驚いて振り向くと、鉄格子に背を向けて寄り掛かる中原幹部の姿があった。
背を向けている為其の表情は見えなかったが、中原幹部は外套を羽織っていなかった。
其の外套が今私の背中に掛けられていた。
どうやら幹部自らが異能を使って鉄格子の間から私に掛けてくれたらしい。
私は幹部に御礼を言おうと口を開き掛けた。
するとそれを遮る様にして幹部が言った。
中也「首領は手前を三者鼎立が終わるまで出さねぇって言ってたな。だけどあれは嘘だぞ。」
突然の告白に私は戸惑って、問いかける言葉を模索した。
中也「手前をコンテナに閉じ込めろと指示したのは紛れもなく首領だからな。」
これ以上聞けば己の心に取り返しのつかない傷が出来る事は分かっていたが、そんな感情とは裏腹に私は幹部に問うた。
「……何故…そんな事を…。」
中也「ある事を検証する為だ。」
中也「手前が此処へ帰ってくるほんの少し前、先に襲撃から帰ってきた芥川から其の“ある事”についての報告があった。」
「…ある事とは?」
中也「…組合の使徒が手前を庇おうとするかどうかだ。結果は案の定、使徒の一人は手前を命懸けで擁護したそうだな。それが今回の判断材料となって今こうして手前を拘束する糧となっている。」
此処で私は先程の鮮明な記憶を辿った。
確か、あの時芥川君はホーソーンさんに何度も問うていた。
────今、貴様は奴を庇ったのか…?
あの彼の何処か嗤いを堪える様な震えた声は、私の今の状況を予測し嘲笑するものに違い無かったのだ。
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葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります! (2018年8月1日 13時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです!通知来る度うきうきしてます!無理せずこれからも更新頑張って下さい! (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです!応援してます!壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います!最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎそーまっち | 作成日時:2018年6月9日 18時