絶対的存在 ページ18
【夢主目線】
早速、本部に着くやいなや重い足取りで首領室へ向かった。
その間ずっと鬱陶しい程に後ろに着いてくる構成員達は何なのだろうか。
しかし、私は其れをさほど気にせず扉をノックした。
「首領、Aです。」
首領「入り給え。」
待ち構えていたのではないかと可視する程、素早い返事だった。
室内に入ると明らかに空気が違った。
何処か重々しく胸を圧迫する様なものを感じた。
中央の豪勢な机に首領は肘を着いて手を組み目を伏せていた。
この沈黙の鋭い空気感に呑み込まれそうになるのを堪えて息を呑んだ。
自らの鼓動すら聞こえてしまうのではないかと思うまでに妙に静まり返ったその空間に少々の嫌悪感を懐き始めた頃だった。
唐突に首領が溜息をついた。
その音でさえ酷く恐ろしいものに感じて身を怯ませた。
首領「君が何故、“自らを囮にすれば組合の使徒が捕まる”と自負していたのかずっと疑問に思っていてね。」
この一言を聞いて一気に己の血の気が引いて、これから何を問われるのか悟った。
首領「幾ら君が変わっている人間だとしても自らを危険に晒したがる様な行為は生物学上の理論に反するからね。」
専門用語を巧みに駆使して外堀から確実に攻めてくる。
背中を一筋冷や汗が伝って、脈がドクドクと速く波打った。
首領「そうしてやむを得ず、君の室内を構成員に捜索させたのだよ。」
そう言って首領は自らの懐に手を入れた。
首領「────之に見覚えはあるかね?」
首領が手に持っていたのは、黒い封筒だった。
そう、あれは某日……部屋に突如として置かれていた手紙の入っていた封筒である。
私が青ざめた顔で言葉を失っている姿を見て首領は冷たく、慈悲垂れる事も無く続けた。
首領「……始め之は君宛てに届いた郵便物だと思ってマフィアの事務機関に調べさせたよ。何故なら組織内の構成員に届く郵便物は一括して彼処で管理されているからね。」
首領は其の黒い封筒に視線を落とした。
首領「然し、君宛てにはここ数日その様な郵便物は届いてなどいないらしい。」
首領「────つまり之は君が独自ルートで非公式に入手した手紙だった訳だね。」
そうしてゆっくりと突き刺す様な鋭い視線をこちらに向けた。
首領「この封筒に手紙さえ入っていないが“隠す”という心理的行動の裏には“罪悪感”が付き物だよ。」
首領「────そうまでして君は何を隠した?」
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葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります! (2018年8月1日 13時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです!通知来る度うきうきしてます!無理せずこれからも更新頑張って下さい! (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです!応援してます!壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います!最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎそーまっち | 作成日時:2018年6月9日 18時