また会えたら、そのときは (ページ8)

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結局夕飯もごちそうになり、ドーナツのお返し、とドーナツより高そうなチョコレートケーキをまでもらって、ジェヒョンの部屋でお互いの友達の話やら、あの先生は不倫をしてるらしいとか、仲が良くて有名だった中学の同級生カップルが別れただとか、根も葉もない噂話をしたりしてしばらくだらだらしていた。そろそろ本気で帰らなければ、という時間に差し掛かったとき、そういえば来週からバイトするんだと伝えたら、ジェヒョンはすっと真顔になり「聞いてないんだけど」と低い声を出した。

『言ってないもん』
「なんで？」
『普通に忘れてたってのもあるけど……そこまで言う必要ないかなって』
「どうして？」
『どうしてって…』
「俺は決めたときに言って欲しかった」
『…なんか面倒くさくなったね』
「俺は元々こんなんだよ。Aが今まで知らなかっただけ」

家まで送って行くと立ち上がったジェヒョンだったけれど、また座ってカップに紅茶を入れ直した。「用意してくれた母さんに悪いから全部飲んで」……そう言われたら飲むしかなくなる。お母さんにはおばちゃんから連絡してくれたみたいだから、その辺は心配ないのだけれど、明日も学校だしお風呂に入って早く休みたいっちゃ休みたいのに。

「おばさん、俺が行くとあんまりいい顔しないからここでしかAとゆっくりできないのにバイトしたらその時間もっとなくなるじゃん」
『…気付いてた？』
「まあ。中学のことどっかで小耳に挟んだんだと思うけど。俺なら自分の子供が幼馴染みのせいで学校に馴染めなかったって分かったら多少は恨むだろうし」
『…そういう訳じゃないと思うけどな』
「他に理由があるにしろ原因の1つではあるだろ」

ぬるくなった紅茶はすぐにでも飲み干せたけれど、私とジェヒョンはそうしなかった。むしろ淹れたての熱い紅茶よりも時間をかけてゆっくり流し込み、23時を迎えるころ「さすがに帰りなさい」とおばさんに言われ身支度をした。

帰り道、ジェヒョンが行くと思っていた高校の制服に身を包んだ男子生徒が前方から歩いてくる。大きな鞄を持っているから塾帰りなのかもしれない。そんな彼は舌打ちをすると、わざと私にぶつかり通りすぎた。

「何だアイツ、待ってて」
『いいよ別に』
「……でも」
『いーの』

私たちが遊び歩いてるカップルみたいで羨ましかったんじゃない？いつもなら軽口を叩くところだったけれど、そんなことを言えるような空気ではないような気がした。