また会えたら、そのときは (ページ6)

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助けてくれたのは私より少し年上に見えるお兄さん。助けてくれたというのは分かったんだけれど、その直後だったから男の人が怖くて何も話せずにいたら、私の親の連絡先を聞いてきたから、それだけはやめてくれと頼むとそれならせめて家まで送ってくと言ってくれて、その人の数歩後ろを歩いた。時々振り向きながら私が着いてきているか確認してくれていたお兄さんの顔は、気が動転していたからなのか思い出せない。数分歩いていたら「A？」と声が聞こえて、自転車を押したジェヒョンが現れた。ただならぬ空気を感じ取ったのか私に駆け寄ってきて「何があったの」と私の顔をペタペタ触る。ジェヒョンを家族か何かと勘違いした様子のお兄さんはさっきあったことを話し出した。

「……俺のせいだ。俺が、ちゃんと、」
「……警察には不審者がいたってそれだけ話しておくから、この後の対応はどうするかは2人で決めて。証言が必要なのであれば俺に連絡してもらえれば「いいです、大丈夫です、ありがとうございました」
「……本当は子供2人で帰すのは心配なんだけど、その子のためにも俺はいない方がいいのかもね」

ジェヒョンはその人の言葉を遮り私の顔を覗き込んだ。私よりジェヒョンの方が泣きそうな顔をしていて、私は泣くに泣けなくて。あ、そうだ、お礼、お礼をしないと。しっかりとお礼をするために後日に連絡はしたいし、どっちにしろ番号をもらわなければと思ったのだけれど、声がうまくでなくて金魚のように口をパクパクさせた私を見て、ジェヒョンは何かが耐えきれなくなったのか「ごめん」と言って涙を流した。大丈夫だよ、助けてもらえたし、私が勝手に帰ったのが悪かったんだ。塾の先生に事情を説明すれば中で待たせてもらえることもできたのに、そうしなかった私が悪いんだよ。声にできなくて、私はジェヒョンのパーカーの裾を掴むことしかできなかった。

お兄さんはしばらくそこにいてくれてジェヒョンが落ち着いたら帰って行った。『自転車、後ろ乗せて』そのときのジェヒョンに言える言葉は、それが精一杯だった。このことは親にも話せず私たち2人だけの秘密にした。

この次の日から登下校を一緒にするようになり私といる時間を増やし始めた。最初は嬉しかったのだけれど段々窮屈になって、傍にいてくれる理由がこれならば離れたいと感じるようになる。

ジェヒョンはまだあの日の自分のことが許せないのだと、私に手を引かれているジェヒョンを見て理解した。