また会えたら、そのときは (ページ5)

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「…A」
『ごめん』
「振り返ったらAいなくて、連絡取れないし、家にも帰ってないって言われて」
『うん』
「…何かあったんじゃないかって」

その場に座り込んだジェヒョンの顔色は真っ青だった。駅員さんが近寄って来ようとしたから、大丈夫ですと告げジェヒョンを立たせる。

私はとっくに過去にできているあのことを、未だにジェヒョンは引きずっているらしい。ドーナツ買ったからジェヒョンの家で食べよう、と誘えば、ジェヒョンは私の手を握って首を縦に動かした。ジェヒョンは私が好きだから私を気にしているんじゃなくて、あの日の罪悪感から逃げられずにいるから、私から離れてはならないのだと思い込んでいる。ジェヒョンのせいじゃないと、ジェヒョンは何も悪くないよって言っても、俺が悪いと言って自分を責めていた。

中学生のとき、ジェヒョンと仲直りをした後も家以外では関わらないようにしていた。女子がとても面倒だということはジェヒョンも感じるようになっていたらしくすんなりと聞き入れてくれた。ジェヒョンと話せるようになったことで女子からの嫌がらせは耐えることができて、ジェヒョンがいてくれたらあとはどうでもいいなあって思うようになった中2の冬の塾帰りにその事件は起きた。

いつもであれば親が迎えに来てくれるんだけど、その日は2人とも遅くなりそうだったからジェヒョンの家に頼んだら、自分が行くと言ってジェヒョンが迎えに来てくれることになった。そもそも、うんと小さいと言う訳ではないけれど、ジェヒョンにそれを頼むのもどうかしてると思う。家から遠くは無かったけれど塾が終わる時間は9時だったし、当時の年齢からしたら大分遅い。でも家が近いことに絶対的な安心感を感じていた私たちは、その時は何も考えていなかったのだ。

塾が終わったのにジェヒョンは時間になってもやって来ず連絡も通じない。おばちゃんに電話をしたら「もう出たよ」と言われたため、家の方面に行けば合流できると思って私は1人で歩き出した。参考書を開いてできるだけ街灯の下を歩いていたら突然強く腕を引かれ、顔をあげたらそこにいたのは知らない男の人。瞬時にやばいと思った私は手に持っていた参考書を顔に投げつけた。それが逆に良くなかったのか、男の人は私に馬乗りになりスカートの中に手を入れた。とにかく逃げなければならないと手足をバタつかせていたら「何してるんですか？」という第三者の声が聞こえて、男の人は慌てて去っていった。