たんぺん。#3

#4 ページ3

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電車に揺られること30分
駅から年上の彼の家までは徒歩20分


只今19時30分 多分家に着くのは20時半ごろ


今日の夜の気温は雨、あいにく傘は持っていない



"降ってますか？"の短いメール


返信は "そこそこ" とだけ


堅物なあの人だから多分車で来ることもない


仕様がない、濡れて帰ろう


そう決心して降りた電車

駅を出るとロータリーにはタクシーや車、無数の人がいた



そしてふと目をやったところに
異様に黒い傘が似合う見慣れた人がいた


思わず小走りで駆け寄って声をかける



「裕志さ…ん…？」

「ああ…お疲れ…」

「なんで…お酒飲んでなかったんですか？家で」

「あぁ…タイミング良くな、それに、どうせ傘持っ
てないだろうから、来た」

「そんなわざわざ…」

「とりあえず、風邪引くから行くぞ…」



自分の右側を濡らしつつ、私が濡れないようにしてくれる裕志さん


傘の持ち手を持つ手とは逆の何もされてない手を握る


大人の余裕を感じる、大きな手のひら
何も言わず握り返してくれるところに、心臓が鳴る



「とりあえず風呂は入れ…帰ったら」

「祐志さんは？風邪ひきますよ…？」

「俺よりお前だろ…」


ああ、ずるい大人
幾つも離れてるくせに
私はまたあなたに一つ恋をした。



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( じゃあ一緒に入りますか！ )

( 冗談言うな )

( はい… )

( …嘘だよ )

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