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見知らぬ天井を呆然と数秒程度見つめ、自分の部屋では無い事を確認する。
ここはどこだろうかとずしっと中身の重い頭で思案を巡らすも、回路に異常があるのか上手く回らない。
身体がとにかく重い。倦怠感が凄まじく、頭がぼやぼやして、身体は酷く熱いのに寒気が止まらない。この状況は2回目で、以前は病院の天井だったなぁとぼんやりと薄れた過去を思い出していた。
左腕が少しだけ痺れ、筋肉痛のような痛みがする。視線を見向ければ、腕には医療用テープが巻かれており、先端は見えないもののチューブがベットの傍らへ伸びていた。
どうやら、点滴を受けているらしくすぐに動こうと思ったが動かず、その場でまた呆然と天井を見上げた。
そうだ…カフェMASKへ戻ろうとした帰路で、私倒れて…。
また、迷惑掛けてしまった。どれだけ、カフェMASKの人達に迷惑をかけているか分からないのに、また掛けてしまった。私が倒れるなんていい迷惑だろう。いや、むしろ都合がいい…？いない方が、都合は本当は良くって…。
「……それは、いや、だなぁ……」
涙ぐんだ声と鼻を啜る音が静寂で満ちた部屋に響く。
私は、自分が思っている以上にカフェMASKやカフェMASKの人達が大好きだ。だからこそ、後者のように思われていると想像しただけで、胸が苦しい。
きなこさんたちに、そんな事を思われていた私は…。
なんで、私はいつも駄目なんだろう。
もう…私は…自分がどうしたいのか、分からない。
気が付けば、ぽろぽろと涙が零れおち、耳近くを通る。
擽ったさを気にとめず、ただ真っ白な天井を見て空調の駆動音を聞きながら、ぼうっとしていたその時。
がらりと引き戸が開き、フローリングをスリッパで擦る足音が此方へ近付いてきた。ふわりと香るベルガモットとラベンダーの香りが悪循環に陥っていた思考を少しだけ和らげる。
「…ん、起きたね。良かった、丸一日寝てたんだよAさん」
「……か、なえ…さん…？」
百合のような可憐で柔和な微笑みを湛え、白魚のような指先で熱い涙を指で掬う叶さんが視界に映る。
叶さんは傍らの丸椅子に座りカルテらしき紙面を見ると、やれやれといった呆れ顔になった。
「どう、して…」
「高熱で倒れた所を運び込まれたんだよ。ま、見た感じ…過労ぽいね。もう身体ボロボロすぎ。あぁ、ここは僕の個人病院だから安心して。…ま、ここに入るのは人前に自分の顔を晒せないような患者ばかりだから、Aさんがいるのは新鮮だよ」
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作者名：こりん
| 作成日時：2024年3月30日 0時
