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ページ22

「改めて昨日はありがとうございました」
「ん」


ロスサントスを包む濃厚な霧が朝日に照らされてキラキラと輝く朝6時。店内は挽いたばかりの珈琲の香りが充満しており、湯気がゆらゆらと揺れる珈琲をカップに注ぐ。
他愛も無い会話が生まれた事に距離感が狭まったような嬉しさを感じつつ、いつも通りにクールな表情を浮かべてサンドウィッチを食すもんどさんを見つめる。


「昨日って、何の話。それに…なんか、近くない?」


じとっとした視線をぶつけながら、カウンター席にいるもんどさんとカウンター内にいる私を交互に見るセリーさん。がじがじとストローの先を噛みながら、向けられる視線に何故か気まずさを感じる。
その隣には、口に苺ジャムを付けて、こんがりと焼けたパンを頬張るcptさんがいて…あの空間だけが今、和んでいる。
もぐもぐと静かにサンドウィッチを食べていたもんどさんは中身を嚥下すると、とんでもない爆弾を落とした。


「あぁ。昨日、抱いた話?」
「…ハ?」
「こ、言葉が!圧倒的に言葉が足りないです、もんどさん!」
「そうかな?文字通りだと思うけど」
「字面的にはそうですけども!ち、違いますからね!?その、昨日は怪しい人に付けられてて、その時に肩を」
「それで、俺がAの彼氏になった」
「彼氏役です!いえ、彼氏役なのか、分かりませんが…!誤解に誤解が生みますから!もんどさん!」


硬直して動かなくなってしまったセリーさんへ必死に弁明しようとしても、もんどさんが説明途中で言葉足らずに発言するものだから誤解が余計に増えていく。
セリーさんの頭が大混乱を起こし、私が必死に弁明を解く光景をつまみにけらけらと笑うもんどさん。
その額を小突きたくなる程の笑い方はこの状況を明らかに楽しんでいる証拠だった。


「彼氏?抱いた?距離近いって…そういうこと…?」
「じゃ、俺いってくる」
「誤解だけ残して行かないでくださいっ!」


見送る為にホールへ出ると不意にもんどさんが振り返り、冷や汗が止まらない私の肩を優しく抱き寄せる。
それは、傍から見ればキスと見えなくもない構図。


「彼女になってくれてありがと」


けれど、私は知ってる。兎の被り物の影に隠れて、誰かをおちょくりたくて仕方ないような、悪い笑みを浮かべているもんどさんがいることを。


「A、ホントにどういう事」
「ご、誤解です…ほんとに、誤解で…!」


これから起きるのは大波乱の一日。
その一日の始まりは珈琲の香りがした。

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堅香子(プロフ) - 文才とてぇてぇが溢れてていっぱいすき (5月3日 19時) (レス) @page22 id: 3ee8fa3e36 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 表現が丁寧で想像もしやすくてドキドキしながら読みました。更新楽しみにしています。 (3月21日 17時) (レス) @page15 id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
しずく - 本編も大好きです。番外編も本編とはまたちがった面白さが見られそうで、これから誰が登場するのか、どのような物語を紡いでいくのかとても楽しみです! (3月9日 0時) (レス) id: 688b0f975d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こりん | 作成日時:2024年3月9日 0時

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