file2:始まりは珈琲の香り ページ16
朝という事実を容赦なく叩き付ける午前7時。
午前7時に仕事だなんて、殆どの人は普通は嫌がるだろうがカフェMASKでの業務だと、驚く程に苦じゃない。
それに、午前7時に訪れる殆どのお客様はこれから仕事を頑張る人達ばかりだ。その頑張りを少しでも手助け出来るように、淹れ立てのコーヒーの提供に今日も勤しんでいる。
「おはようございます」
「おはよう」
無表情とはまた違う、クールな表情を浮かべながらもんどさんがカフェMASKへ来店される。短い言葉でいつも通りのメニューを告げると、店内左側の1番端っこのカウンター席でカフェMASKに置いてある新聞やスマホを見始めた。
こぽこぽと珈琲が呼吸をするように音を立て、香ばしい珈琲の香りが肺を満たす。サンドウィッチとヨーグルト、淹れ立ての珈琲をカップに注ぎ、もんどさんへ提供。
ぺこりと礼儀良く頭を下げたもんどさんはサンドウィッチを手に取り、口許を覆っていたマスクを下にずらすと黙々食べ始めた。
意外と食べ方可愛いんだよなぁ…なんかこう、所作が綺麗といいますか。サンドウィッチの隙間から零れて皿に落ちたスクランブルエッグを見て、やっちまったみたいな顔してる時が特に…なんて、ほのぼのしながら洗い物を効率よく片付ける。
朝は犯罪者も眠るようで、一時の合間だけ静かなロスサントスになる。ゆえに、警察も一時の休憩時間となり、多くの人は仮眠や退勤を切るらしい。もんどさんはこうやって食事を摂りにくるのが毎日のルーティーンだ。
昼の常連客がセリーさん、だるまさん、バニラさんらだとすれば朝の常連客はもんどさんだ。
セリーさん達のように喋る事は無いので、距離感でいうと顔見知り程度でかなり遠い。でも、店員とお客さんとしては適切な距離感であり、もんどさんと2人きりの店内が無言でも気まずさは無く、心地良ささえ感じる。
「…ハッ！？」
いつ、皿を下げようか暖簾の隙間から様子を伺っていると…もんどさんがスマホを見て、口許を優しく緩ませている所を目撃してしまった。
微笑はあまりにも美しく、もんどさんの圧倒的顔面美も相まって見惚れずにはいられない。笑った所を見た事が無かったので衝撃度は凄まじく、被り物の口許を思わず手で覆い隠していた。
そして、乙女の勘が稲妻のように全身を駆け抜ける。
普段では見せない、スマホに写った何かを見てもんどさんが笑った。あんな素敵な微笑を浮かべる相手…
それはつまり、もんどさんには彼女が居るということ…！？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1870人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
堅香子(プロフ) - 文才とてぇてぇが溢れてていっぱいすき (5月3日 19時) (
レス) @page22 id: 3ee8fa3e36 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 表現が丁寧で想像もしやすくてドキドキしながら読みました。更新楽しみにしています。 (3月21日 17時) (レス) @page15 id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
しずく - 本編も大好きです。番外編も本編とはまたちがった面白さが見られそうで、これから誰が登場するのか、どのような物語を紡いでいくのかとても楽しみです！ (3月9日 0時) (レス) id: 688b0f975d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こりん
| 作成日時：2024年3月9日 0時
