もう1つの缶バッチは何処に？（おまけ） ページ15
中身の少ない酒瓶やボトルが並ぶ棚はダウナーな店の雰囲気を演出しており、けばけばしい床板と部屋に充満し燻る煙草の臭いは大人の領域の演出を担っている。
元々煙草の臭いは苦手だったが周りが吸いすぎて、嗅覚が可笑しくなってしまった彼は構わずにベッドの上で寝転がっていた。
「見てくださーい！俺、今日カフェMASKに行ったんすよ！そしたら、くじしてて！俺が1番目の客だったみたいで5回引いてみたら大当たりが出たんすよ！しかも、内容がデザート引換券！なのでこれ、ボスにあげちゃいます！」
「エッ！！いいの！？でもこれツルギ君が当てた奴でしょ？」
「いいんすよボス！ボスにはいつもお世話になってますから！」
「ボスにお世話になっているというより、ボスはお世話されてる方けどね」
「言えてるわうるかさん」
「あれ、じゃあうるかさんに渡せばいいんすかね…？あ、葛葉さん！？それ、俺のッスよ！？」
「どーせ、俺らの手土産もあるんでしょ？」
「そうっす！流石です、葛葉さん！」
ダーツ勝負をしていたかるび、釈迦、うるかの3人に混じったのは天真爛漫な笑顔を引っ提げたツルギだった。手には恐らく、カフェMASKで購入したお菓子等も入っており、お肉の組のお土産分も入っているのだろう。紙袋がかなり膨れている。
糖分が不意に欲しくなった葛葉はツルギの手に持っていた紙袋をひょいと取り、中身を見る。何とも美味しそうなクロワッサンやドーナツ等が透明なビニール袋に梱包されており、自然と手が伸びていた。
「ツルギくん。兎好きの葛葉にこれ渡していい？」
「いいっすよ！葛葉さん、兎好きだったんすね！」
「ハ？俺、兎好きなんて一言も…」
うるかがコイントスのように指で弾いた缶バッチがチョコレートデニッシュを持つ葛葉の手元へ降ってくる。慌てて、取った葛葉はうるかをじとっとした視線を送るも相手にされず、「なんだよ」と小さく呟きながら缶バッチの絵柄を見た。
「何これ」
「カフェMASKの店員さんをイメージした缶バッチみたいっす！兎の被り物とおむらいすは…誰だったっけ？まぁでも！大切にしてくださいね葛葉さん！」
なんて言われてしまえば、要らないと返せる訳もなく。
知らんぷりと言わんばかりに澄まし顔でお茶を飲むうるかを正視するも取り合わない。
「…マジかよ」
葛葉はただ、手許にある缶バッチを震える手で握りしめた。
今にも手放したい。けれど、絶対に離したくない。
そんな彼を、うるかは横目でずっと見ていた。
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堅香子(プロフ) - 文才とてぇてぇが溢れてていっぱいすき (5月3日 19時) (
レス) @page22 id: 3ee8fa3e36 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 表現が丁寧で想像もしやすくてドキドキしながら読みました。更新楽しみにしています。 (3月21日 17時) (レス) @page15 id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
しずく - 本編も大好きです。番外編も本編とはまたちがった面白さが見られそうで、これから誰が登場するのか、どのような物語を紡いでいくのかとても楽しみです！ (3月9日 0時) (レス) id: 688b0f975d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こりん
| 作成日時：2024年3月9日 0時
