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車は修理中という体裁にして、2人乗りが出来るバイクをガレージから取り出したローレン。ヘルメットをAに被せ、顎紐をきちんと装着させるとアクセルを蒸かし、ハンドルを強く握った。
ぐぅんという駆動音と腹底まで響く重低音を黄昏時のロスサントスに落とし込む。ローレンは「しっかり捕まっててくださいね」と背後にいるAに呼び掛けた。
「は、はい!」
「2人乗りは初めてっすか?」
「あ、いえ…後ろに乗るのは初めてです。前は運転しまして…」
「え、すごいっすね。バイクの2人乗り結構ムズいのに」
すると、彼女は普段では絶対にしないような行動である、後ろから抱き着くという行為をした。細腕が自分の腰に絡みつき、小さな身体が持つ温かさが背中越しに伝わる。
Aに抱き着かれただけで、変な汗が出てくる。ぶわっと自分の頬が紅潮していくのが分かる。えげつない程に顔の頬が緩んでいるのも分かる。多分、顔面は崩壊してる。
嬉々に浮かれて、事故を起こさないようにいつもより慎重な運転を心掛けた。この時間が何時までも続けばいいと願った瞬間には、カフェMASKの駐車場に到着しており、肩をがっくしと落としたのは言うまでも無い。
「送って下さりありがとうございます、ローレンさん」
離れていく温もりに名残惜しい気持ちを感じつつも、ヘルメットを返して礼儀正しく御礼を告げるAを見つめる。
兎の被り物をしていて、今は顔は見えないが…それで満足だった。
白魚の手を取り、自身の唇まで引き寄せる。手の甲にチュッとリップ音を鳴らせば、「ぎぇッ」と不思議な声を洩らすAにくすくすと笑いが込み上げてきた。
「Aさん良かったぁ!中々帰ってこないから心配したよー…って何!?どういう事!?ウチってそういうサービスしてたっけ?え、サービスかこれ!?」
カフェMASK裏口から出て、Aを見るなり安堵の表情を浮かべるトワ。
Aの手の甲にキスをするローレンという構図を見た瞬間に、水を差してしまったという申し訳なさと状況の分からなさに困惑している様子だった。
「トワさんはまだ知らないんだっけ?」
Aから貰った缶バッチをストレージから呼び出し、自身の胸元へと付ける。呆気に取られていたAも缶バッチを付ける様子を見て嬉しそうに、目を細めていた。
「俺、Aサンが最推しで過激派同担拒否で超ガチ恋勢なんだわ」
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堅香子(プロフ) - 文才とてぇてぇが溢れてていっぱいすき (5月3日 19時) (レス) @page22 id: 3ee8fa3e36 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 表現が丁寧で想像もしやすくてドキドキしながら読みました。更新楽しみにしています。 (3月21日 17時) (レス) @page15 id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
しずく - 本編も大好きです。番外編も本編とはまたちがった面白さが見られそうで、これから誰が登場するのか、どのような物語を紡いでいくのかとても楽しみです! (3月9日 0時) (レス) id: 688b0f975d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こりん | 作成日時:2024年3月9日 0時