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「は、はぁ…あ、あ、あのっ…ち、近い、のですが…」
「ふふ、わざとだよ」
「エッ」


遠慮無しに迫ってくる叶さんに対し、たじろぐ。すると、叶さんはクスッと百合のような微笑みを浮かべて、すぐに身を引いてくれた。


「あら、怒っちゃった」


叶さんは私では無く、その後ろいるであろうフィールドに立つ誰かに対して視線を送る。
視線につられて、後ろを見てみればそこには黒フードを深く被った人物が立っており、隠された紅い瞳と視線が交わるとぷいっと顔を背けられた。

…あの人、何処かで見たことあるような?


「ちょっと悪い事しちゃったかなぁ」
「…?」
「あぁ、Aさんは気にしないで。これに関しては僕が悪いから。ま、いいものは見れて満足だけど」
「あの、なんで私の名前を…」
「そりゃ有名だもん。セリーとローレンを虜にしたカフェ店員。定番おむらいすが美味しくてラテアートが上手くて、特に猫が超可愛いって聞いたんだ。そして…いや、これはやめとこ」


出来れば、後者の説明が先にあって欲しいような…なんて思うのはカフェ店員としてのプライドが僅かにでもあるからだろうか。
叶さんは呆然と立ち尽くす私を見るなり、手を引いて私が座っていた席へと案内する。その隣に座った叶さんはまじまじと私の顔…では無く、無表情の兎の被り物を見つめてくる。


「…あの、何でしょうか?」
「ここで一緒に観ても大丈夫かな」
「え、えぇ…大丈夫、ですけど」


ちらりと胸元から吊り下がった札は参加者専用の代物。
叶さんも恐らく参加者に違い無いが…なぜ、そんな彼がここに居るのだろうか。
そして、何故初対面なのにこんなにも見つめてくるのだろうか。
叶さんは視線の先にすぐ気付くなり、悔しそうにしながらも何処かすっきりしたように説明してくれた。


「僕は第1試合に出て、モンドに最後撃ち合いで負けちゃったんだ」
「そうだったんですね。お疲れ様です」
「ありがとう」


叶さんが御礼を告げた直後に頭上のスピーカーから第3回戦開始のアナウンスがかかる。先程沸いた熱が更にブーストを掛け、観客達の声がドーム内に響き渡った。


「ふふ、楽しみだね」


叶さんは不思議な人だ。
初対面でこの距離感は明らかに可笑しいのに、不思議と嫌に感じない。

人の懐に入るのが上手いのだろう。
雰囲気がふわふわとした柔らかいマシュマロみたいだからだろうか。でも、隙は全く無いようにも見えて…本当に、不思議な人だ。

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humanfuuka1225(プロフ) - この作品を読むのが日々の日課になりつつあります…!更新楽しみにしてます!! (2月18日 15時) (レス) @page50 id: 535d582f25 (このIDを非表示/違反報告)
シノ(プロフ) - 今まで生きてきた中で1番好きです…!!更新を心待ちにしております…! (2月18日 14時) (レス) id: c35a40f298 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 更新楽しみにしております〜! (2月18日 14時) (レス) @page50 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
焼きそばパン粉(プロフ) - 夢主が優しすぎてもうこっちまで癒やされます。凄いです。この作品を読むと語彙力が飛ぶ仕組みなんですね。もう、マジで、本当に凄いです。癒やされるどころじゃない、涙出るかと思いました。優しすぎて。 (2月9日 9時) (レス) @page32 id: a8f548a317 (このIDを非表示/違反報告)
t94ywrc84k(プロフ) - もう最近この作品が生き甲斐すぎる。更新ありがとうございます (2月8日 23時) (レス) @page32 id: 24b98aaa97 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こりん | 作成日時:2024年1月27日 0時

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