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「ここにいたんだ、Aさん」
不意に背後から声を掛けられ、ビクッと肩が揺れる。
頭を回らすと、桃色の髪を揺らしたなるせさんが手を振った。
手摺をパルクールで飛び越え、私の隣に座ったなるせさんはぐぐっと気持ち良さそうに身体を伸ばす。
運営で主催者であるなるせさんが何故、ここにいるのだろうかという疑問が籠った目を受け取り、なるせさんはくしゃっと笑って、オレンジジュースをちゅぅと吸い上げる。
「観客席に行ったんだけど、Aさんがいなくって。通りすがりのだるまに尋ねたら、ここにいるって聞いたの」
「あ、すみません。スマホ見て無くて」
「ううん。スマホとか抜きで、直接話したかったからいいの」
なるせさんが、私に話…まさか、バイトで何かやらかしてしまっただろうか。もしかして、バイトクビ…とか。
様々な不安に駆られながらも、なるせさんの言葉を待つ。
なるせさんは私と向き合うなり目を細め、花笑みを湛える。
何とも美しい微笑みに魅入られるのは性なのかも知れない。
「ねぇ、Aさん。今はどっち、なのかな」
「…え？」
「あ、ごめんね言葉足らずで。…今のAさんは仕事のAさん、プライベートのAさん。どっちなのかなって」
桜色の薄い唇から放たれた問い掛けに言葉が詰まる。
普通なら勿論、プライベートだと言うべきなのだろう。
仕事はしていないし、のんびりとチュロスとメロンソーダを食べている。
でも、すぐにプライベートという言葉が出てこなかった。
「…やっぱ、そうだ」
なるせさんは何処か心配そうに、私を見つめる。
この世界で初めて向けられた"私自身"の精神を心配するその目に、どう対応していいか分からず、困惑してしまう。
でも、なるせさんはそんな私の心も見透かしているのか、雰囲気を明るくするように喋り掛けてくれた。
「いやー、分かるよ。仕事の時の自分とプラベの時の自分、そのオンオフの切り替えって難しいよね。俺はお客さんだしバイトで雇ってる身。まぁ気を緩めってのも難しい話だわ」
「す、すみません…」
「ううん。Aさんが謝る事じゃないよ。社会人としては正しいし、それが悪いって言ってるわけじゃないんだ。…でも、少し心配で。Aさんって、誰に対してもずっとオン状態な気がしてさ」
よく人のことを見てる人だなとはずっと思っていたけど。
私なんかの事も見てくれていたなんて、驚いた。
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humanfuuka1225(プロフ) - この作品を読むのが日々の日課になりつつあります…！更新楽しみにしてます！！ (2月18日 15時) (
レス) @page50 id: 535d582f25 (このIDを非表示/違反報告)
シノ(プロフ) - 今まで生きてきた中で1番好きです…!!更新を心待ちにしております…！ (2月18日 14時) (レス) id: c35a40f298 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 更新楽しみにしております〜！ (2月18日 14時) (レス) @page50 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
焼きそばパン粉(プロフ) - 夢主が優しすぎてもうこっちまで癒やされます。凄いです。この作品を読むと語彙力が飛ぶ仕組みなんですね。もう、マジで、本当に凄いです。癒やされるどころじゃない、涙出るかと思いました。優しすぎて。 (2月9日 9時) (レス) @page32 id: a8f548a317 (このIDを非表示/違反報告)
t94ywrc84k(プロフ) - もう最近この作品が生き甲斐すぎる。更新ありがとうございます (2月8日 23時) (レス) @page32 id: 24b98aaa97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こりん
| 作成日時：2024年1月27日 0時
