▷不安いっぱいなわんこさん ページ32
静かに見据える先にあるのは無感情な兎の顔に隠された本心を映す瞳なのだろうか。
真っ暗だと思われていた空間だったが壁に嵌め込まれた不透明な窓から差し込む青白い光が唯一の光源となっていて、何かの正体はすぐに分かった。
「ローレンさっ…？」
綺麗に生え揃った長い睫毛、隙間から覗く白緑の双眸。
重くのしかかった感情に瞼が耐えきれないのだろうか。伏せ目がちに見えた瞳は宿る熱を極限まで失った氷のようで。時を刻む秒針が強制的に止まり、空気が一瞬で冷えていくのを感じた。
視線が交わった瞬間、彼から放たれる強烈な圧に息を呑み、その淡麗さに一瞬で魅入られた。
綺麗。ホントに、綺麗な人だ。
格好良いは大前提の元、加えるスパイスとしてわんこと見違える程に人懐っこくて、可愛らしい彼しか見たことが無かった。だからなのか、無言の時がこんなにも美しい人だったなんて思いもしなかった。
___そう、無言。ずっと無言。
魅入られている合間も、彼は一言も喋る事は無かった。
故に、今の彼が少しだけ怖く感じる。
「び、びっくりしました…幽霊に捕まったのかと」
怖さを紛らわしながら、平然を取り繕うように喋りかけてみる。
いつもなら秒速で返すのだが、今のローレンさんは言葉を返さない。ずっと此方を見つめるだけで何も言わない。
無言の圧だけが、状況を飲めずにいる脳味噌を圧縮させてく。
「あ、あの、ローレンさん…」
「…」
「その、あの、えぇと…用事がなければ私はこれで」
なんか、まずい気がする。
やっと芽生えた危機感に従うよう、壁に沿って退散しようと試みるもローレンさんの細くて長い、モデルのような足が行く手を遮った。
壁とローレンさんの靴底が接触して音が出た瞬間にひゅ、と喉奥が細くなる。
恐る恐る、ローレンさんの方へ目を転じれば、恐ろしさと美しさを兼ね備えた鬼の気迫に足裏と地面が縫われ、その場から動く事が出来なくなった。
「あ、あの…ロ、ローレンさ…」
「…っすか」
「え、なんて…？」
「バニとガチで付き合ってるんですか？」
ドスさえも効いたそうな、低い声で放たれた言葉。
宇宙に放り出した思考を脳味噌に戻して起動ボタンを押せば、意味が分からずに首を傾げる。
____はて、彼は今何を言ってるんだ？
「バニラさんと私が…………………私がですか！？ない、無いです！付き合ってないです！！そんな、私なんかがバニラさんと恋仲なんて！そんな目で見られたらバニラさんが可哀想です！！」
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humanfuuka1225(プロフ) - この作品を読むのが日々の日課になりつつあります…！更新楽しみにしてます！！ (2月18日 15時) (
レス) @page50 id: 535d582f25 (このIDを非表示/違反報告)
シノ(プロフ) - 今まで生きてきた中で1番好きです…!!更新を心待ちにしております…！ (2月18日 14時) (レス) id: c35a40f298 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 更新楽しみにしております〜！ (2月18日 14時) (レス) @page50 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
焼きそばパン粉(プロフ) - 夢主が優しすぎてもうこっちまで癒やされます。凄いです。この作品を読むと語彙力が飛ぶ仕組みなんですね。もう、マジで、本当に凄いです。癒やされるどころじゃない、涙出るかと思いました。優しすぎて。 (2月9日 9時) (レス) @page32 id: a8f548a317 (このIDを非表示/違反報告)
t94ywrc84k(プロフ) - もう最近この作品が生き甲斐すぎる。更新ありがとうございます (2月8日 23時) (レス) @page32 id: 24b98aaa97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こりん
| 作成日時：2024年1月27日 0時
