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何かやらかした事は取り敢えず、確定。
けど、全然覚えがない。自覚が無いなんてそれこそやばい奴だが、本当に何か気に障ることをした覚えがない。
いつも通りに接していたら、こんな感じになってしまった。
セリーさんの無言は極寒地に冷水をかけられるほどに冷たく感じられた。
最初は嫌われたのかと思っていたが、私がカウンターに立つと静かに近寄ってきて、すぐ側に座る。声を掛けるとぷいっと顔を背けるが私が接客対応していたら、彼から視線を感じる…ような気がする。
本当に猫みたいで、雰囲気はあまり良くないがちょっと可愛く感じてしまう。そんな余裕も、セリーさんがそっぽを向けば凍り付くが。
「セリーさん」
「なに」
「その、私何かしました…かね?」
「…別に」
絶対になにかやらかしてる間ではないか、それ。
腰を低くして聞こうにも、セリーさんが話す様子はなさそうである。カウンター席に座るだるまさんに助けを求める視線を送るも、彼もやれやれという様子で頭を抱えていた。
「ちわーっす。え、何?修羅場?」
「こんにちわ〜」
からんからんと扉に付いたベルを鳴らしながら入店したのはなるせさんとバニラさん。
店内の空気をすぐに察したらしいなるせさんは兎の被り物で表情が分からないはずなのに私を見て、「うちのセリーがごめんね」と労いと謝意がこもった謝罪をされた。
「…?あ、この前はありがとね。Aさん」
「こちらこそ。この前の"でぇと"、凄く楽しかったで__ひぅッ…!?」
「ん?どうしたの?」
「あ、いえいえっ。お、お気になさらず!」
慌てて取り繕いながら、会話の最中に脚の表面をわざとこそばやく撫でた犯人を見る。
さっきの猫という表現が可愛く見える程に今は鬼の気迫を纏ってそっぽを向いていた。トゲトゲしいオーラがひしひしと皮膚に突き刺さり、ちょっとずつ居心地が悪くなってくる。
「どこ行くの」
空気に交じるように存在感を消して、カウンターからキッチンへ移ろうと試みようとすればすぐさま脚に体重を思いっきり掛けてきて、行かせないようにしてくる。
セリーさんの体重で固定された身体ではどうする事も出来ず困惑している合間にもカウンター席はとある話題で盛り上がっていた。
「ロスサントスバトロワ大会開催時刻は午後15時から!そして、もちろん!優勝者には豪華な賞品がありますが…そのうちのひとつをAさんにしたいんだけど、どう?」
「……へっ」
こういう指名のされ方は、初めてである。
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humanfuuka1225(プロフ) - この作品を読むのが日々の日課になりつつあります…!更新楽しみにしてます!! (2月18日 15時) (レス) @page50 id: 535d582f25 (このIDを非表示/違反報告)
シノ(プロフ) - 今まで生きてきた中で1番好きです…!!更新を心待ちにしております…! (2月18日 14時) (レス) id: c35a40f298 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 更新楽しみにしております〜! (2月18日 14時) (レス) @page50 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
焼きそばパン粉(プロフ) - 夢主が優しすぎてもうこっちまで癒やされます。凄いです。この作品を読むと語彙力が飛ぶ仕組みなんですね。もう、マジで、本当に凄いです。癒やされるどころじゃない、涙出るかと思いました。優しすぎて。 (2月9日 9時) (レス) @page32 id: a8f548a317 (このIDを非表示/違反報告)
t94ywrc84k(プロフ) - もう最近この作品が生き甲斐すぎる。更新ありがとうございます (2月8日 23時) (レス) @page32 id: 24b98aaa97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こりん | 作成日時:2024年1月27日 0時