▼ ページ13
『でも、新しい事を挑戦するってなると…ちょっと腰が重くなる部分があると言いますか』
あぁ、気持ちが分かるなって思ってしまった瞬間。
『何かしたい事、やりたい事とか無いの？』というなるせの言葉をふと、思い出した。
(…ラテアート入門編？)
カウンターに置かれたラテアート入門編の本を見た瞬間、新しい事に挑戦出来ていいなって素直に思ってしまった。
(そっか…)
前へ自然と進んでいく彼女の背中が羨ましいと気付いた時。
本当に自分がしたい事、やりたい事があったんだと自分の中で答えが導き出されたような気がした。
「えっと…」
練習で自宅から持ってきたというラテアートに必要なミルクフォーマー等の道具を店内奥キッチンで広げるAさん。
兎の被り物をして、顔は全く見えないがうきうきしているのが一目で分かるぐらいに楽しそうだ。ラテアート入門編の本に目を通しながら、エスプレッソにミルクを慎重になって流し込んでいく。
今回挑戦するのは定番であるハート型のラテアート。
ラテアート入門編によるとよく見るラテアートはフリーポアという技法で行われるらしい。
さっぱりした味わいの生クリームに舌鼓を打ちつつ、其の様子をカウンター席から見守る。暖簾が何かに引っかかっていて、キッチンの中が丸見えな事に気付いていないのだろう。
「ん"っ」
苦味のある呻き。恐らく、ラテアートに失敗したのだろう。
落胆の溜息を吐き出しつつも、切り替えたAさんは次の珈琲カップにエスプレッソを淹れ、次にミルクを流し込む。
「…理由は要らないかぁ」
自身のスマホを取り出し、検索履歴をタップ。
検索履歴は全てメカニック関係の事で埋まっており、本当にやりたいという本音が詰まっていた。
…ただ重い腰を軽くして立ちあがせるのにはあまりにも充分すぎる素材である。
「…バニラさん、失敗作なんですが味は大丈夫だと思うのでお飲みになられませんか？」
「喜んで」
キッチンからホールへ出てきたAさんが手に持ってきたカップには歪なハート型のラテアートが。それでも味は変わらず美味しくて、ミルクが程よく苦味をまろやかにしてくれている。
「凄く美味しい…ねぇ、Aさん」
「はい？」
「もし、ラテアートをお店で出すってなったらさ…俺が1番のお客さんになっていいかな」
「勿論です。発案者であるバニラさんに満足して飲んで頂けるように、腕を磨いていきますね！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2216人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
humanfuuka1225(プロフ) - この作品を読むのが日々の日課になりつつあります…！更新楽しみにしてます！！ (2月18日 15時) (
レス) @page50 id: 535d582f25 (このIDを非表示/違反報告)
シノ(プロフ) - 今まで生きてきた中で1番好きです…!!更新を心待ちにしております…！ (2月18日 14時) (レス) id: c35a40f298 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 更新楽しみにしております〜！ (2月18日 14時) (レス) @page50 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
焼きそばパン粉(プロフ) - 夢主が優しすぎてもうこっちまで癒やされます。凄いです。この作品を読むと語彙力が飛ぶ仕組みなんですね。もう、マジで、本当に凄いです。癒やされるどころじゃない、涙出るかと思いました。優しすぎて。 (2月9日 9時) (レス) @page32 id: a8f548a317 (このIDを非表示/違反報告)
t94ywrc84k(プロフ) - もう最近この作品が生き甲斐すぎる。更新ありがとうございます (2月8日 23時) (レス) @page32 id: 24b98aaa97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こりん
| 作成日時：2024年1月27日 0時
