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「お仕事は大丈夫ですか…?」
「仕事は大丈夫だよ。今は暇な時間帯だしね」
ありさかさんは配達の仕事へ赴き、駐車場でぽつんと取り残されたバニラさんと私。
バニラさんはカフェMASKの常連客で喋った事もあるので2人きりになっても気まずさは無い。
だが、カスタムしてもらう為のガレージへ行く交通手段をどうするか悩んでいた。
私が運転するとバニラさんが後ろに乗る事になり、また逆にバニラさんが運転すると私が後ろに乗る事になる。
何に悩んでいるのかと言うと…必然的に抱き着かれるか、抱き着くかという2人乗り限定で発生するイベントがある事だ。
「どっちが運転する?って、Aさんの練習も兼ねて、Aさんが運転した方がいいよね」
バニラさんは見た感じ、特に気にしてなさそうである。
だが、イケメン耐性が無い私はめちゃくちゃ気にする問題。
前提の話として決して、バニラさんが嫌という訳では無い。
無いのだが誰だって、男性に抱き着かれるor抱き着くだなんて、心臓がかなりまずい事になる。
バニラさんを後ろに乗せたまま、事故ったりしたら…その理由がバニラさんに抱きつかれて運転に集中出来ませんでした、なんて本当に笑えない。
黙秘権がこんな形で効果発動するなんて、知ったら親は泣くだろう。
「そ、そうですね!じゃあ、バニラさん。どうぞ後ろに」
ヘルメットの顎紐をしっかり付けて、バイクに再度跨る。
バニラさんもありさかさんのヘルメットを借りて、付け終わると後部座席に跨り___突然、ピタッと動きを止めた。
どうしたんだろうと後ろを振り向けば、何処を掴もうか困惑しているバニラさんがいて。目が合うなり、ちょっと気まずくなる。
「ごめん。俺、いつもみたいに乗せて貰おうとしてた。すぐ降りるね」
「あ、いえ。全然気にしていないので…大丈夫ですよ。しっかり、持たないとバニラさん病院行きになっちゃいますし」
「ありがとう。…嫌だったら、すぐ言ってね」
バニラさんの逞しい腕が腹前で交差し、背中にピタッと身体が密着した瞬間、信じられない程に顔が熱くなった。
これはバニラさんの安全の為、安全運転安全運転と邪念塗れの煩悩を払いつつ、仏の境地に精神を追いやって、アクセルを握る。
「そこを右に曲がって…」
ガレージへ道案内の度に近くでバニラさんの落ち着いた低音が傍で聞こえる。
…無理だ。もう邪念しか生まれない。
なんで、皆は後ろに乗せ合っても平気なんだろうか。
その心得が今、物凄く欲しい。
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humanfuuka1225(プロフ) - この作品を読むのが日々の日課になりつつあります…!更新楽しみにしてます!! (2月18日 15時) (レス) @page50 id: 535d582f25 (このIDを非表示/違反報告)
シノ(プロフ) - 今まで生きてきた中で1番好きです…!!更新を心待ちにしております…! (2月18日 14時) (レス) id: c35a40f298 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 更新楽しみにしております〜! (2月18日 14時) (レス) @page50 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
焼きそばパン粉(プロフ) - 夢主が優しすぎてもうこっちまで癒やされます。凄いです。この作品を読むと語彙力が飛ぶ仕組みなんですね。もう、マジで、本当に凄いです。癒やされるどころじゃない、涙出るかと思いました。優しすぎて。 (2月9日 9時) (レス) @page32 id: a8f548a317 (このIDを非表示/違反報告)
t94ywrc84k(プロフ) - もう最近この作品が生き甲斐すぎる。更新ありがとうございます (2月8日 23時) (レス) @page32 id: 24b98aaa97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こりん | 作成日時:2024年1月27日 0時