第四十一話 ページ43
ふと、ハクが師匠をみた。
ハ「ジジイ」
その呼びかけに答えるように、ムンドク師匠は目を伏せる。
ム「…これは火の部族の警告じゃ」
ハ「警告？」
風が、木の葉を揺らす音がする。
それさえも耳障りに感じる沈黙。
ム「…ヤツらはスウォン様を王に即位させたがっている」
ハ「火の部族が…！？」
まぁ、そうだろう。
あいつらはずっと前からスウォンと癒着していたから。
…俺が健在なうちは何もしてこないだろうと思い放置していたが…あれは、よくない手だったな。
師が、火とスウォンについて話している。
自分がスウォンを王に承認しないから圧力をかけてきたのだろうとも。
ふと、ヨナを見ると、ヨナは一点を見つめ、呆然とその身を抱えてたっていた。
今、俺たちの周囲には誰もいない。
「…ヨナ」
ヨ「兄、上…私…」
「大丈夫、落ち着きなさい。深呼吸するんだ」
俺が、私であったときのように声をかけ、頭を撫でる。
すると、ヨナは少し落ち着いたように見えた。
ム「姫様」
声を聞いたヨナが師匠を見上げる。
ム「大丈夫じゃ、承認はせん。皇子も、ご安心ください」
それはきっと、俺たちとハクを守るための策なのだろう。
…俺を犯人にでもしてしまうのが、一番簡単なのに。
「…申し訳ありません、ムンドク師匠」
ム「お気になさらず。それに、スウォン様を王に認めてしまったらハクに国王殺害の疑いがあることも認めてしまうことになる」
ヨ「ハクが国王殺害！？」
俺が頷くのと同時にヨナが小さく叫んだ。
ハ「…だろうな。俺に罪を着せるのが一番手っ取り早い」
「それは違うぞ、ハク。こうなれば、私に罪を着せるほうが身分を考えても楽なはずだ。お前も風も、巻き込まれたんだ。私はあいつと火が癒着していることも気づいていた。私の采配ミスだ。すまない」
小さく頭を下げる。
実際、今俺が言ったことは事実だ。本当に申し訳なく思っている。
俺がもっと速く行動すれば、父上もﾀﾋなずにすんだろうに。
ハ「だとしたら、配下の俺が気付けなかったことが一番のミスです。あんたは悪くねぇ」
違う、そうではないし、そう言わせたかったわけでもない。
これは、俺でも私でも変わらないミスだ。
ム「まぁ、そんな論争は後じゃ。…心配はいらん、火の部族とてこれ以上の無茶はせんじゃろう」
少し、嫌な予感がした。そしてそれは、程なく的中することとなる。
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