第三十二話 ページ34
〜時は戻って、3日前、緋龍城〜
NO side
高華王国は、火・水・風・地と王族である「空」を加えた五つの部族を中心として政治を行う。
各部族の長は「将軍」と呼ばれ、王と部族を守護する最強の戦士であった。
そんな部族長たちが集まって行われる重要な会議が、『五分族召集』である。
グ「国王が崩御された？！」
そう叫んだのは、地の部族長、イ・グンテ。
皇子、Aの師の一人である。
グ「一体どういう事だ、急な呼び出しがあったと思えば国王崩御だと？」
ジュ「ヨナ姫もA皇子も、ソン・ハク将軍も行方不明との事。城で何かあったのかな？」
続けて言うのは水の部族長、アン・ジュンギだ。
スジ「その場の痕跡からして、皇子は重傷を負っておられる様だとか…ハク将軍の行方について、ムンドク長老は何かご存じなのでは？」
これは火の部族長であるカン・スジンだ。
ム「…何が言いたい、火の部族の若僧よ」
風の部族長、ソン・ハクに代わり出席した前将軍、長老のムンドク。
彼もまたA皇子の師であり、また、スウォンの師でもある。
スジ「緋龍城ではこんな噂が広まっておりますぞ。…陛下と皇子はハク将軍によって殺，され、ヨナ姫は人質に彼に連れ去られたと
…これは、風の部族の謀反ではないか、とな」
無論、ムンドクは自身の孫が謀反など、その様なことをするとは考えていない。
そしてそれは事実である。
そして事の真相も何となく予想がついていた。
ジュ「決めつけるのは良くないな…行方がわからないのだからハク将軍にも何かあったのでは？」
グ「あの雷獣は齢十三にして我をも凌ぐ力を持っていたんだぞ。そう簡単にﾀﾋぬものか」
スジ「私は城の兵が何人も彼に重傷を負わされたと聞いています」
故に、ムンドクは憤っていた。
その場の人伝に聞いた話だけを信じ、ハクを信じぬ当代の将軍達に。
忠誠を誓った王を、姫を、愛する弟子を、そして大切な孫を、助ける事のできなかった己に。
カツンと、靴の音がした。
ス「お静かに」
部族長を召集した王の甥、スウォンである。
隣には、空の将軍、ハン・ジュドの姿もある。
ス「陛下は3日前、何者かに弑逆され、ヨナ姫もA皇子もハク将軍も行方知れずです」
グ「スウォン様、では、やはり」
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