第十五話 ページ17
すると、こちらの戦う意志を汲み取ったのか、スウォン様の近くにいた男がこう言った。
男「控えよ下郎。今より緋龍城の主となったスウォン陛下の御前なるぞ」
その言葉に、スウォンが敵になったのだと認識する。
だが、信じられない。嘘だ。俺は誰より近くでスウォンや姫さんたちを見てきた。
こんなことあっていいはずがない。
ハ「…誰が、なんの主人だって？」
まずは、この国の将軍として、陛下の無事を確かめなければならない…。
スウォンのことは、そのあとだ。
ハ「どうも…嫌な予感がするんですがねスウォン様。イル陛下はどこにおられる」
スウォンの目を見て問う。
少し殺気をむけながら。
するとスウォンもこちらをまっすぐ見て答えた。
ス「私が先程、地獄へ送って差し上げた」
それを聞き全身の血の気がひく。
つい衝動的に地面に大刀の柄を打ち明けてしまった。
ダァァン！と言う音が庭中に響く。
ハ「…酒にでも、酔っておいでか？戯言にしては度が過ぎますよ」
そう問うとすぐに返答があった。
ス「ヨナ姫に、聞いてみるといい。……その目で王の死を確かめられたのだから」
……最悪だ。
勢いよくスウォンに切り掛かる。
よくみると、頬に傷がある。
まだ新しいそれは誰かが抵抗したことを指す。
ハ「真実を言え！」
スウォンと切り結びながら問う。
ス「偽りじゃない」
信じられない。信じたくない。
あのスウォンが、王を殺.した…？
ハ「スウォン！国王を弑逆しただと？！お前が…！あの優しい王を…！」
スウォンは大きく後ろへ避ける。
すると集団の一人がスウォンに声をかける。
どうやら自分が変わろうと言うらしい。
それに対しスウォンは下がっていろと一蹴する。
ス「目の前にいるのはこの緋龍城の要、五将軍の一人ソン・ハクです」
それを聞いた周りの奴らはざわざわと騒ぎ出す。
だが、そんなことどうでもいい。
ハ「……なぜだ？王位の簒奪か？」
簒奪などこいつがするだろうか。
幼い時から懸命に剣の鍛錬をして、国のためといろいろな講義を聞いていたこいつが…。
姫さんに、簪を渡したこいつが…
ハ「お前は、そんなものに執着するやつじゃないだろう？武器を厭うか弱き王に刃を向けたのか？てめえの誇りが、それを許したのか？！」
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