第十一話 ページ13
ス「…必要ならば、そうします」
会話を重ねながら袖に忍ばせた小刀を徐々に引き出す。
「そうか………なら、…しかた……ないな！」
そう言って勢いよく小刀を振るう。
スウォンは驚きながらも見事に交わし、私の剣はスウォンの頬をかするにとどまった。
ス「まだそんな力があったとは…驚きました」
スウォンがそうこぼすが、構わず二度目の攻撃に移る。
こんな時、思い出すのは師匠のことだ。
幼い時、木刀片手にかけてきた私の気持ちを汲み取って、刀の扱い方を教えてくれたグンテ師匠。
刀がなくても、その場にある武器で戦えるようになりたいと言う私の我儘に付き合って、槍術や弓術を教えてくれたムンドク師匠。
ああ、そういえば以前ムンドク師匠が言っていた。
ム『A様。貴方は基本に囚われ過ぎている。いいですか、自分に合った動きを考えるのです。』
私の第二攻撃を難なくいなしたスウォンが私の腕を刺す。
「うぅ…」
ム『貴方はもっと物事を柔軟に考えられるお方だ。太刀筋も、柔軟に、と言うことを忘れぬようにしてください』
「たちすじも……じゅう…なんに……」
休む間を与えぬよう、少しでもスウォンの体力を削れるよう…それだけを考えていた。
それが、いけなかった。
私の今の実力は、圧倒的に負けている。
弱いものが強いもの相手に手加減すればあっけなく負けて終わる。
スウォンが後ろに回り込んだことに、私は気がつかなかった。
「っ！！！」
スウォン「終わりです、A。できるならみんなで笑って過ごしたかったﾎﾞｿｯ」
なっ…
「スウォン！おまえは…」
私の聞き間違いだろうか。
スウォンが笑って過ごしたかったと言った。
一瞬泣きそうな顔をして…
確かにそう聞いた。聞き間違いではないと認識を改める。
だが、次の瞬間スウォンはなによりも冷徹な顔をしていった。
ス「さよなら、A」
ああ、結局誰もまもれなかった…すまない、ハク。
ヨナのことを頼む。
私は、きっとここで死ぬだろう。
すまない。ごめんなさい、父上。
(思い出せ、Aお前が何者か。なぜここに生まれたのか。この森は、思い出すには最もおあつらえ向きだぞ)
誰かの声がした。
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