俺が落とす【男主】 (ページ16)

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「上手くいかないのはなんで？」ページ16

相手が俯いていた顔をあげた瞬間、唇が触れてしまった。

事故ではない。故意に、だ。

「っ！？」

彼にバッと肩を押される。

それでも、顔が紅潮していて嬉しかった。

不意打ちに弱い。

ああ、かわいい。

「 …………俺、お前の期待には応えられないよ… 」

少し泣きそうになっている相手の頭を撫でる。

「 ……だったら僕に優しくしないで？辛いから。悲しいから。期待、するから。」

次はこちらが泣きそうな顔をする。

彼はもっと眉毛を下げる。

＿＿＿＿＿”これも計算だ”。

これでわかったなんて言えるほど、彼は甘くない。

「 ……優しくしないなんて、出来ないだろ… 」

「ずるいよ、ヒョン…そうやって僕を”傷付けるんだね” 」

そう言ってしゃがみ込んだ。

さっきまで晴れていた空が暗くなってくる。ぽつ、ぽつ、と頭を打ち、騒々しい雨音が耳を劈く。

＿＿＿＿雨の音が世界一嫌い。

「 ……思わせぶりは最低だって知ってるから、お前が俺のことずっと恋愛対象で見てるって言うなら、俺はそういう対応をするべきなんだろうな」

バッと後ろを振り返ればヒョンの背中があって、追いかけたくても追いかけられなかった。

まるでもう追わないでくれと言いたげな背中だったから。

ああ、

なんで伝わらないんだろう。

なんで僕は不幸なの？

なんで僕にしないの？

僕だったら幸せにするのに。

ヒョンのことこんなに好きなのに。

「 ……っはは、ははははは、」

「ヒョン！！何してんの？！そんなところにいたら風邪ひくよ」

彼と交代でイエナが傘をさしに来た。心配して見に来てくれたんだろう。本当に優しい弟だ。

「 …ヒョン、頑張りすぎだよ。見てられない。」

「 ……滑稽だって言いたいんでしょ」

心配してくれていることは十分にわかる。でも、僕はもう純粋に捉えられるほど余裕が無くて、嫌味に聞こえてしまっていた。

「 …え、？」

「どうせお前だって馬鹿にしてんだろ？僕の演技にだって気付いてるくせに」

「えん、ぎ？どういう、こと、？」

きっと物凄く恐い顔をしていたのだろう。イエナは恐怖で体が動かないのか、固まったまま唇を震わせる。声もいつもより上擦っている。

「 …どうせ誰も心から応援なんかしてない。偽善者だね、お前も」

さされた傘をはね返して足早にその場を去った。

振り返ることはできなかった。