俺が落とす【男主】 (ページ14)

今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:34,427 hit

「嫌いじゃないから。」ページ14

「そろそろ行こうよ」

トイレの近くで話すのに付き合ってくれたイリノには感謝しなければ。

自分の気持ちがまだなんなのか分からなかった。

はっきり好きとは言えない。

罪悪感もあるし、理性もある。

スンとチャンビンが話してるときに少し胸の奥底がズキッと傷んだだけだ。

歩き出したイリノの横を歩く。

「 …ところでお前の好きな人って誰なの？」

「俺？」

「教えてくれよ」

イリノは立ち止まってこちらを向いた。

その表情に、思わず息を飲む。

「 …お前には関係ない」

冷えきった視線が突き刺さる。

地雷を踏んでしまったみたいだ。

いつもヘラヘラしてる彼とは違う。まるで誰にも渡さない、と言うかのようなオーラを解き放っていた。

「っ、そんなこえー顔すんなよ」

「はは。早く行こー」

何かを隠されてるような気がした。

.

2人のところへ戻り、また気まずい空気にしてしまう。

「ちょっと僕、トイレ」

俺が戻ったと同時にスンは行ってしまった。

きっと我慢してたのだろう。

沈黙。

こうなることは分かっていた。

でも、どうしても知りたかった。

「「あの」」

息がぴったり合ってしまった。

バッとそちらを向く、と次は目が合ってしまう。

何故か、逸らさなかった。

そしてそのまま、言葉を続けた。

「 ……俺のこと、嫌い？」

前までは嫌われていてもいいと思っていた。

「 …！」

彼は目を見開き、声を上げずに驚いた。

そして、目を細めて笑いながら、……泣いた。

「 ……嫌いになんか、なれなかった」

ボロボロと零れ落ちる涙を前に、どうすることも出来ない。

俺には拭く権利も、抱き締める権利もない。

俺が傷付けたから。

俺がボロボロにしたから。

「だって優しいから。…っ、普通に、してくれる、から…ｯ」

彼はその場にしゃがみ込む。

俺も一緒にしゃがみ込んで、背中を摩る。

そのくらいしか出来なかった。

「俺に触れられることも、話しかけられることも嫌なのかと思ってた。」

彼は大きく首を横に振る。

”そんなわけない”と言いながら嗚咽が大きくなる。

「俺が許せなかったのは、俺だけだから…っ」

その言葉の意味はなんだったんだろう。