ファーストラブ。 (ページ31)

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「 Aは俺のことどう思ってる？」

耳元で囁かれる。

甘くて低い声で。

心臓の音がうるさい上に、緊張して声が出ない。

こんなこと、初めてだった。

「 …どう、って… 」

なんとか声を絞り出す。

なんて返せばいいんだよ〜〜！！！

悩む頭の片隅には、あの男がいた。

ハッ、とする。

頭の中にじゃない。

私の、目線の先にいる。

「＿＿＿＿＿＿＿ｯ」

やけにリアルな幻だと思った。

目が合い、逸らされ、逃げられた。

なんでこんなときに限って、会うの？

絶対に勘違いされた。

フィリックスの腕を思いっきり抓る。

「いった！？何すんの」

腕から解放され、距離をとる。

「 ……会ってすぐに手を出すような男は信じられない。例え、タイプでも。」

顔を歪めて、そう言った。

そう言うと、思いっきり笑われた。

「さっきまで顔赤くしてたくせに何言ってんのさ」

少し嫌味っぽく言われ、でも図星だから何も言えない。その代わり、釘を刺してやる。

「 …でも気付いたよ、私チャンビンが好きだって」

彼は少し目を見開いた。

「ありがとね」

そう言って走った。

さっき目が合って逃げていった彼を、一刻も早く追い掛けたかった。

誤解を、解きたかった。

❁

CBside

「ん… 」

布団から起き上がって時計を見ると、いつも起きる時間より早かった。

少しランニングでもしよう。

そう思って、トレーニングウェアに着替えて外へ出た。

「はっ、はっ…… 」

走りながら昨日のことを思い出す。

どんな顔して会えばいいんだろう。普通に、やっほー？おっす？……それとも、告白するべき？

でも俺はアイドルで、恋愛は解禁されてはいるが、ファンが離れていくのが怖い。それに、また同じことを繰り返すかもしれない。

俺のせいで＿＿＿＿

好きだからといってずっと一緒にいれるわけじゃない。

少し足を弛めて歩く。角を曲がった先で、男女が抱き合っている姿が見えた。

その男女は、Aとフィリックスだった。

思いっきりAと目が合い、思わず逸らした。

その場にいられなくて来た道を走って戻る。

嫌だ。

嫌だ。

” 俺、待たないから ”

立ち止まる。

その言葉が頭の中で何度も響いて消えない。

静かに目から雫が落ちた。