ファーストラブ。 (ページ26)

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「これ、どこにやったらいい？」

A「あ～それはここ」

「りょーかーい」

片付けを初めて2時間がたち、だんだんと部屋が出来てきたような気がする。

Aのものの配置は統一感があり、そういうことに気を使う子なのだろうと思う。

そして指示しているA本人は、なんと携帯を弄っている。

「おいお前もやれよ」

A「あ、うん……まって…… 」

俺の言葉なんて上の空で、携帯の画面に映る何かにニヤけている。

「何見てんの？」

その画面に映る、“ Felix ”の文字。

A「わあああ！！……人の携帯見るなんて最低！！」

何、顔赤くしてんだよ。

ｷﾞｭｩ、と携帯を握り締め、こちらを睨む彼女に腹が立つ。

「 ………乙女かよ」

A「うっさい！」

「 ……リクスに来てもらえばよかったじゃん。」

自分の中の嫌な部分がこつこつと湧き出てくるような感覚になる。

本当は、そんなこと思ってない。

俺を選んでくれたなら、それだけで嬉しかった。

でも、本心は？

俺があのとき連れ出さなかったら、今頃リクスと一緒に片付けをしていたかもしれない。

彼女はﾊｯとしたように、携帯を床に置いた。

A「ご、ごめん。そうだよね、友達が来てるのに携帯ばっか見てるとか嫌だよね。」

気分悪そうにフラフラと立ち上がり、片付け始める。

……男に虐められたことが蘇っているのだろう。

好きなやつを追い詰めてどうするんだよ。

「 ……A、」

A「な、なに？」

遠慮がちにこちらを見つめるA。

今にも泣きそうな顔は、似合ってなかった。

……笑ってて、ほしいのに。

近付いて、両手を頬に当てる。

A「ちゃ、ん…び、ん？」

「 ……笑って、A 」

A「へ……？」

頬から手を離し、その手をそのまま背中へ持ってきて、こちらに抱き寄せる。

Aはもぬけの殻のように反応がない。

焦っている様子もないし、抗う様子もない。

ただ、呆然と、こちらに体を委ねてきた。

あー、めっちゃいい匂い。

「 ……やっぱり、女の子だな」

A「 ………女の子扱いしないでよ…… 」

「無理。リクスになんか取られてたまるか」

その言葉に、何も返ってこなかった。

そのまま数分間ずっと抱き合ったままで、手放すタイミングを失った。

そう思い顔を覗き込んだら、Aは寝ていた。

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