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淡い光は姿を変え、同級である竹谷八左ヱ門の形を象っていく。
(なぜ……。)
八左ヱ門は床に崩れ落ちるように座り込み、その場を涙で濡らしていく。
「は、八左ヱ……」
『俺だ……俺のせいなんだ……。』
遮るように発された八左ヱ門の言葉に伸ばしかけていた手が止まる。
「何を言っているんだお前は…。」
声をかけるが、八左ヱ門がこちらを視界に留めることはない。ただ辛そうに、何かを堪えるように、大切な物を愛しむように涙で濡らしていく。
『俺を庇って、Aは……！俺のせいなんだ…俺が、俺さえいなければアイツは……！！俺なんかいない方が良かったんだ……！』
「っ、……！」
Aは掴みあげる勢いで八左ヱ門の胸ぐらを掴む。
例え偽物だとしても。例え本当に八左ヱ門がそう思っていないとしても、Aには許せないものがあった。
「自分がいない方が良かったなんて言うな、お前は……お前は、凄いやつじゃないか…！！」
自分たちは忍者のたまごなのだ。忍者になろうとしているのだ。それは決して生半可な気持ちではない。それぞれが強い覚悟の上でなければ、生きていけないような場所でお互い成長してきたのだ。それを意味がないと否定されるのは、いくら八左ヱ門でも許せなかった。ましてや忍者の世界など、弱き者が倒され死ぬことに悪などない。実力のない者が悪いのだ。だからそうならないように血を吐くような実習や授業を受けているのに。偽物であろうと、この5年間を否定されるのはAにとって許せないことなのだ。
「私が何故ここまで頑張ってこれたかわかるか……お前がいたからだ…！八左ヱ門が隣にいたから頑張れた！生きようと思えた！！お前を……お前を庇ったのだって……どうしても、死んで欲しくなかったからだ……。八左ヱ門が死ぬことが、自分が死ぬより耐えられなかったんだ……俺が死ねば良かったなんて、言わないでくれよ……八左ヱ門……。」
そっと八左ヱ門を抱きしめると、肩のあたりに八左ヱ門の流す涙が僅かに服に湿る。
「俺だって…Aが傷つくことなんてして欲しくねぇよ……。わかってくれなんて言わないから、生きて欲しい。……そんくらい叶えてくれたって良いじゃないか、A……。」
「…っ…。」
ごめん、と掠れた声で答えた返事はなく、変わりに強く、強く抱きしめられる。
「一緒に居たい。……Aのことが好きだ。」
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作者名：なつざき。 x他1人 | 作成日時：2020年9月23日 20時
