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侮っていた。所詮向こうは3流忍者、私達の相手にはなりもしないだろう、と誰もが思っていた。しかしそれが大きな間違いだったのだ。
「八左ヱ門!!」
足を狙われた八左ヱ門のすぐ近くに苦無が刺さる。1人、1人と相手をしていてはこちらの体力を無駄に消耗するだけで、向こうの勢力が減るようには一切感じられない。忍者とは本来、闇に紛れて暗躍する者達であり、表立って戦闘をすることは少ない。故にどれだけ静かに暗殺できるのか、が求められるのだが、今回ばかりはそうではなかった。多勢に無勢、まさしく現状を表したような言葉だった。
「A、俺のことはいい!お前だけでも逃げろ!」
「っ、そんなこと出来るわけないだろう!! 私が逃げたらお前はどうなる!!」
だがそうは言っても、もはや根性だけで立っているも同然だった。実力は自分たちより下だとしても、大人の全力を何十回を受け続けていれば、筋肉が使い物にならなくなる。Aが八左ヱ門を庇うようにして立っていられるのも、守りたいという気持ちと、忍者としての維持だけが殻を被っているような、酷く脆いものだった。
左からの突撃を苦無で軽く流し、右からくる忍者に流した衝撃でそのまま顔面に苦無をぶつけ、そのまま蹴り倒す。上から飛び降りてくる忍者をすかさず避け、落ちていた刀を蹴り飛ばし、顔面に1発殴りを入れる。
「っ、はぁ、はっ、はぁ……!」
(…まずい…もう、体力が……このままでは八左ヱ門諸共、ここで生き途絶える……。)
それだけはダメだ。せめて八左ヱ門だけは助かる方法を探さねば。
虚ろになった視界で八左ヱ門を見やると、後ろに刀を持った忍者が八左ヱ門の頭の上からそれを振り下ろす直前であった。
(……あぁ……。)
次の瞬間、今まで考えていたことなど全てを忘れ、Aは持て余す力全てを使い、思いっきり八左ヱ門を押しのけた。
「________!!!!!!」
悲鳴にならないような悲鳴と、濃ゆい鉄の匂い。暖かな、そして自分よりも一回り大きな体に、強く抱きしめられる。
手を伸ばすのと同時に、何か大切な糸がぷつりと途切れるのが、Aにはわかった。
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作者名:なつざき。 x他1人 | 作成日時:2020年9月23日 20時