1話.諸行無常は語るのか ページ2
1.諸行無常は語るのか
諸行無常。それは仏教の教えを説いたものの一つである。意味としては『永久不変なものなど1つもこの世にはない。』という意味だ。人間や動物は産まれて、必ずいつか死ぬ。決して変わらぬものなどないのだと説いたのが、この諸行無常であるのだ。
「なに読んでんだ？」
上から声が降り、顔を上げる。そこには竹谷八左ヱ門が教科書を片手に持っており、その顔は授業での疲労が見て取れる。Aはそっと本を閉じ、疲れているクラスメイトに笑いかける。
「『忍術学園の都市伝説集〜武器編〜』だよ。操虫棍を使う生徒は飛躍力が高いだとか、苦無が夜になると踊りだすとか。何よりも面白いのは、これを書いたのがうちの生徒ということだな。」
「また変な本読んで……。隣、座ってもいいか？」
「あぁ。」
八左ヱ門が隣に座り、Aは読むのを再開する。二人でいるときはいつもこうなのだ。八左ヱ門が何をしているのか訪ね、Aが返事をする。そして同じ机でそれぞれ違うことをする。別に違う場所でしても良いだろうに、お互い糊でもくっつけたかのように動かない。同じ学級である鉢屋三郎と不破雷蔵の関係により目立って騒がれはしないが、よくよく考えれば双忍並に八左ヱ門とAは共にいることが多い。
「……なぁ八左ヱ門。お前は神と仏、どちらが正しいと思う？」
「はぁ？ 正しい、正しくないじゃなくて、どちらを信じるかってだけだろう？ 自分がどちらかを信じていないからといって、相手が間違ってる訳でもないと俺は思うぞ。」
「……変わったな。昔は神様なんか信じないと豪語していたのに。」
「人間、考えだって変わるだろ。それも1つの成長だよ。」
Aは本から目を逸らし、教室から見える青空を見上げる。あぁ、誠に清々しい程の晴天である。
(……変わらぬものなどない。人は変わっていくものだ。……私が……この世界は”偽物“だと知っていると話せば……私達の関係は、どう変わるのだろうか。なぁ、諸行無常よ。)
続く
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作者名：なつざき。 x他1人 | 作成日時：2020年9月23日 20時
