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それでも向かい合って座っている瑞稀くんは不機嫌を隠さない。
おかしい。
私の知っている瑞稀くんは、皆に優しくてニコニコして爽やかで、賢くて礼儀正しいから先生達にも信頼されている人。
今までこんな表情は見たことない。
…いくら好みじゃないとしても、何だかおかしい。
しかも結局なんだかんだニコニコして食べてたし。発言と表情が伴ってない。
もしかしたら、と思う。
もしかしたら、クリームソーダじゃなくて私が気に入らないのかも知れない。
だからこんな意地悪な事言うのかも知れない。
早く帰りたいからこんな事言うのかも知れない。
私はここまでずっと緊張していたから、瑞稀くんにしてみたらただただ退屈だったのかも知れない。
何を間違えたんだろう。この服か、この爪か、あるいは私という存在そのものか。
そう思ったら地面と自分が地続きでグルグルと回る感覚がした。
溶けたソフトクリームとメロンソーダの境目みたいに、私のこころに雑に混ざり合った不透明な何かが流れ込んでくる。
落ち着きたくてクリームソーダを一口飲む。
ストローで混ぜていなかったからか底のメロンソーダ部分にはまだバニラアイスが到達していない。
強い炭酸の効いた緑色は、今の私には刺激的すぎて全く気持ちが落ち着かない。
それでも緊張で喉が乾いていたのか、一気に飲んでしまう。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、
「行こ」
瑞稀くんはさっと伝票を取ってお会計を済ませて、先に外に出て行ってしまった。
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作者名:冷麦 | 作成日時:2019年7月5日 13時