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好きなひとと指先が触れ合った、
綺麗な目を至近距離でじっと見た。
そして、その目に見られた。
恥ずかしそうに視線を逸らされた。
井上くん。
私、いまうまく振る舞えない。
…熱くてくるしい。
しんどいよ。
ドキドキするよ。
かみさま。
そんな偶然、やめてよ。
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イスに戻ってからは猪狩くんのマジックを上の空で眺めていた。
見てはいたはずだけれど、会話もしたはずだけれど、記憶にない。
何度か涼くんにいつものゼロ距離スキンシップでからかわれたけれど、
それもぼうっとやりすごしていた。
涼くんは透明な目で私を見ていた気がする。
今にして思えば何か言いたかったのかもしれない。
井上くんとやけに視線がぶつかって、
その度私はぱっと逸らした。
恥ずかしくて。どうしたらいいか分からなくて。
私が井上くんを目で追いすぎていたから。
だから目が合う回数が多かったんだと思う。
どうしようもなく意識しすぎてたんだ。
視線が合うたびに、ものすごくドキドキした。
胸がぎゅっとなってぐらぐらした。
さっきのことは多分誰が見てもささいなこと。
井上くんだってもう気にしてないと思う、けど。
私はずっと意識してる。
熱い指先。
まっすぐ私を見た瞳。
「ごめん」って言った井上くん。
ぐるぐる回って、こころから離れてくれない。
どうしてなの。
そう思う裏側で。
…「どうして」なんて、そんなの。
こんなに分かりやすいことないよ。
この気持ちに今日気づいたばかりのくせに。
完全に、井上くんに恋してるんだ。私。
どうしていいか分からないくらい、
井上くんが好きなんだ。
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作者名:冷麦 | 作成日時:2020年6月5日 20時