4 ページ5
.
ものすごく色っぽいまなざしで私に語りかけてくる、この男の子。
喜多川学園高等部生徒会長にして、地域一帯の女の子の間で「青のシンメ」と呼ばれる憧れの的。
橋本涼くん。
「ね…?」
この上なく優しい声で涼くんはそう言うけれど。
ね、って何。
なんなの。
優しそうでありながらも駄目押しするかのような、陥とすような話し方は、なんなの。無理無理むりむり。
何でこうなったの!?
----------------
時間をすこし巻き戻そう。
今日はホワイトデー。
チョコのお返しにって井上くんに連れられてきたのは喜多川学園生徒会室。
ついさっきまで涼くんお手製のご馳走を食べていた。
わいわい食事をしながら、私はみんなとすごく楽しい時間を過ごした。
猪狩くんが披露したトランプマジックの鮮やかさと巧みな話術に魅せられた。みんなでじいっと手もとを凝視していたけど結局タネは分からなかった。
猪狩くんは、知的で器用だ。
高橋さんは3月末から始まるプロ野球開幕戦についての考察を身振り手振りを交えて元気に熱弁していた。
どうやら野球が好きみたいで、特に横浜ベイスターズを愛してるのがひしひし伝わってきた。
高橋さんは、熱い。
作間くんは楽しくてテンションが上がったのか、唐突に「えへへぇ」ってはにかんでいなくなったと思ったら、馬のかぶりものをして現れて謎の舞を披露したあと、奇声を発しながらけん玉を始めた。
作間くんは…独特だ。
涼くんはニコニコしつつも頃合いを見てお料理を温めなおしてくれたり、サラダを取り分けてくれたりと、まさに「気の利く優しい男の子」そのものだった。
434人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:冷麦 | 作成日時:2020年6月5日 20時