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約束の時間、少し前。
若佐第一高からすぐ近く。
お招きを受けた約束の場所へと、
学校帰り制服のままで急ぐ私。
まだ冬の寒さは衰えないけれど、足取りは軽い。
手に
あの日作ったチョコレートの袋が5つ。
オーロラカラーのクリアなビニールバッグ。
薄いハート型の上にナッツやドライフルーツが可愛く飾られたチョコ達が中から透けて見えている。
赤、青、緑、紫、白。
それぞれの色のリボンをちょこんと結んでラッピングをほどこしてある。
…みんなに、なかよしのお礼のちょっとしたプレゼント。
大したものじゃないけれど、みんな食べてくれるかな。
…井上くんは、もう食べてくれたかな。
この前渡したチョコレート。
ひとつだけ特別なチョコレート。
そんなことを思いながら、どきどきしながら。
喜多川学園高等部。
向かった白い瀟洒な正門の前には。
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「おい、おせーんだけど」
不機嫌そうなむすっとした顔。
でもほんのちょっと嬉しさがのぞく顔。
赤いネクタイに白い制服。
ポケットに手を入れて細いすがたで立っている、171cmの男の子。
赤の彼。
「熱もういいの?」
『うん。すぐ引いたし大丈夫。心配かけてごめんね』
「よかった…お前ほんと訳分かんねーから予想つかねんだよ、行動」
『え?そう?』
「…最初っからそうだろ。
ここでモミジ透かしてニヤニヤしてたり、いきなりいなくなったかと思えば涼にキスされそうになってたり」
『…たしかにそう、かも』
言われてみれば、心当たりがありまくる。
…なんだか懐かしいな。
「ほんと…目離せないんだって、お前」
やめて。そんなこと言わないで。
大きな目でじっと見つめないで。
また。
また勝手に大騒ぎしはじめる。私のこころが。
恥ずかしくて、やけに意識してしまって。
ここにふたりでいることに緊張し始めてしまった私は先を促す。
『あ、っ、行こう?寒かったよね、早く受付…』
「待って」
「…待って。
ありがと。すげー美味かった」
そう言って、井上くんは照れくさそうに横を向いた。
すこしだけ顔を赤くして。
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2月14日、バレンタイン。
喜多川学園高等部。
向かった白い瀟洒な正門の前。
そこには、
雪の日に渡したチョコレートを食べてくれた赤の彼。
井上くんが、
待ってくれていました。
After valentine 8181.
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冷麦(プロフ) - みちゃこさん» みちゃこさん、コメントありがとうございます。好きと言ってくださって嬉しいです!感謝です! (2020年3月16日 15時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
みちゃこ(プロフ) - このお話大好きです。これからも更新頑張って下さい! (2020年3月16日 0時) (レス) id: b50848dd48 (このIDを非表示/違反報告)
冷麦(プロフ) - おかゆちゃんさん» おかゆちゃんさん、コメントありがとうございます!きゅんきゅんしてくださって、素敵な感想を寄せてくださって、本当に嬉しいです…!励みになります! (2020年2月23日 0時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆちゃん(プロフ) - こんなにきゅんきゅんするお話に出会えて感動してます( ; ; )登場人物全員かわいすぎる…!本当に評価が一度しか出来ないのが悔やまれます(>_<)これからも素敵なお話楽しみにしてます! (2020年2月23日 0時) (レス) id: a7174925fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冷麦 | 作成日時:2020年2月8日 17時