1 【Happy valentine for 8181】 ページ2
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「あ、
それはぽろっと出た、幼馴染の大昇の言葉。
透明感が仕事しすぎな白くて綺麗な肌の口もとをほんのすこしだけ茶色く汚したまま、
びっくりして指先の残りを見つめている。
甘いカカオの香りが立ち込める、うちのリビングのソファに座って。
対面キッチンで紅茶を淹れている、髪を結んだエプロン姿の私に向かって。
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今日はバレンタイン前の最後の週末。
午前中からたくさんの女の子たちに紛れて、メモしていた材料を買い込んで。
スマホの画面とにらめっこして、材料の重さをはかったりチョコを刻んだりテンパリングして。
型に流し込んで、ナッツやドライフルーツで可愛く飾って。
どうにかこうにか形になったチョコレートを冷蔵庫で冷やして。
ひっちゃかめっちゃかでドタバタなキッチン。
悪戦苦闘する私の家のインターホンを鳴らしたのは、
隣に住む同い年の岩崎大昇だった。
「回覧板持ってきたんだけど…めちゃくちゃ甘い匂いするね?」
玄関を開けた私に目を輝かせてふにゃっと笑う、この幼馴染。
高校は別々だけど、背もぐっと伸びたけど、人懐っこい柔らかい笑顔は昔から変わらない。
午後3時、ちょうどおやつの時間。
「何か作ってるなら食べたいんですけどオーラ」をニコニコしながら発する大昇に、
1ターン目のチョコも冷え固まった頃だし、せっかくだから味見してもらおうってリビングに招き入れた私。
「え、めちゃくちゃ美味しい!」
『へ、そうかな』
「うん、Aセンスある!うま!」
『またまた、褒めてもチョコ以外出ないからね?』
そう言ってはみたけれど、本音はものすごく嬉しい。
だって手作りチョコなんて小学生以来。
しかも作ったのはほぼお母さんで、私がやったのはデコペンでチョコの文字を書いたのとラッピングくらいのもの。
初めてのひとりチョコレートの料理工程、正直全然自信がなかった。
でも眼前の大昇の嬉しそうな笑顔に、すこしは自信持ってもいいのかなって励まされる。
…こんな顔してくれるかな、あのひとも。
「A、なんかニコニコしてない?思い出し笑い?」
『!してないしてない!』
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冷麦(プロフ) - みちゃこさん» みちゃこさん、コメントありがとうございます。好きと言ってくださって嬉しいです!感謝です! (2020年3月16日 15時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
みちゃこ(プロフ) - このお話大好きです。これからも更新頑張って下さい! (2020年3月16日 0時) (レス) id: b50848dd48 (このIDを非表示/違反報告)
冷麦(プロフ) - おかゆちゃんさん» おかゆちゃんさん、コメントありがとうございます!きゅんきゅんしてくださって、素敵な感想を寄せてくださって、本当に嬉しいです…!励みになります! (2020年2月23日 0時) (レス) id: 5b6161b271 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆちゃん(プロフ) - こんなにきゅんきゅんするお話に出会えて感動してます( ; ; )登場人物全員かわいすぎる…!本当に評価が一度しか出来ないのが悔やまれます(>_<)これからも素敵なお話楽しみにしてます! (2020年2月23日 0時) (レス) id: a7174925fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冷麦 | 作成日時:2020年2月8日 17時