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「俺のこと本気じゃないの分かってる。
Aちゃんが遊びでキスしたってことも。
…でも、やっぱり諦めらんない。
そばにいたいから。すきだから。
このままずっとこんな中途半端じゃやだから」
波が、白く砕けた。
ゆるく引いていった。
『…ちがう』
「違うって何が」
『遊びなんかじゃ、ない』
「…」
作間くんは穴があくほど私を凝視した。
刺すような視線。
『私もすき。すきだから言えなかった。
でもそれって間違いだったって今さら気づいて。
…もう会わない、って言われると思ってた、今日』
言いながら泣いてた。
勝手に涙がこぼれてた。
その涙は、作間くんの指で拭われた。
「脈ないってずっと思ってた」
『私だって…キスしなくなったし、態度変わったし』
「それは!よくないって思ったから。すごく好きになったから、付き合ってないのに駄目だって。でも何考えてるのか全然分かんなくて」
『だから何考えてるのって言ってたの?何回も』
「…気づいてたんだ」
『作間くんの口癖だもん』
作間くんと私は似ている。
夏の日、ずっとそう思ってた。
帰ってからは、私だけがすきなんだって思ってた。
…それは作間くんも一緒だった、なんて。
ぼやけた視界の向こうで波が混ざり合ってゆく気がした。
『…私。すきだから、付き合うのがこわかった』
そこで初めて、作間くんは変な顔をした。
「…何で」
『いつか別れるから、って思って。付き合わなければ別れることもいって』
「確かに、いつかは別れるかもしれないけど」
そういちどは同意してみせた。けれど。
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作者名:冷麦 | 作成日時:2019年12月28日 10時