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「時計だって…
あ、ほら、砂時計だってさらさら動くんだから」
そう言いながら、足もとの砂をつまんでさらさらと落として、砂時計を真似て見せる。
砂時計。ちいさい頃夢中で見てた。
確かお父さんのどこかのおみやげだった。
ガラスのなかですこしずつ落ちてゆく砂を眺めては
減っていくばかりだなって思ってた。
きっちり3分でなくなる。
さらさら絶え間なくこぼれてゆくのは綺麗だけれど
いつまでも砂が足されることはないから、
なんだかさみしいなって思ってた。
何度も逆さまにして見てた。
『うまい例えだって思ってるでしょ』
「うん、分かった？丁度砂あったから」
笑いながら高い位置からきらきら落とす砂。
海の砂って何でこんなに白くて綺麗なのかな。
そしてその砂の向こうの作間くんも、やっぱり綺麗だ。
時はやっぱり止まらない。
砂時計の砂が落ちるみたいに。
胸が痛い。何もかも最初から間違えた、きっと。
ここで出会わなければよかった。
ここでキスしなければよかった。
それでも。
ここですきにならなければよかったとは思えないんだ。
作間くんがすきなのは動かせない。
…泣きたいくらいに胸が痛くても。
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砂を落とした作間くんは手を払った。
その長い指先から残りの砂をぱぱっと落として、
口を開いた。
「時は止まんないから…
だから、言うね。…付き合って」
『…』
「付き合って」
『…え？』
柔らかな陽を受けて優しい陰影をたたえたまま、
黒髪を陽に透かして茶に変えたまま、
作間くんが私をじっと見つめている。
長いコートのすそにさっきの砂がすこしだけ付いたままで。
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作者名：冷麦
| 作成日時：2019年12月28日 10時
